日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、座長:高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)

10:05 〜 10:25

[HTT17-05] 表面波の計測に対する分布型音響センシング(DAS)技術の適用性の検討

*野中 隼人1、Hubbard Peter2、林 宏一3、横田 泰宏1、伊達 健介1、升元 一彦1、曽我 健一2 (1.鹿島建設株式会社、2.カリフォルニア大学バークレー校、3.応用地質株式会社)

キーワード:分布型音響センシング(DAS)、表面波、多チャンネル型表面波探査(MASW)、位相速度分散曲線

近年,分布型光ファイバ計測技術の一つである分布型音響センシング(DAS)技術が注目を集めている。DASは光ファイバ自体がセンサーとなり,長距離に渡って空間的に高密度なデータを取得できることから,地球物理学を始め様々な分野において革新的な振動モニタリング技術として期待されている。一方,建設分野では安全かつ合理的に地下構造物を建設するために,ボーリング調査や物理探査により地下の地質状況を適切に評価することが重要である。本研究では,弾性波を用いた浅部物理探査に対するDASの適用性を評価することを目的として,多チャンネル型表面波探査(MASW)を実施しDASの基本的な性能について知見が得られた。

 米国カリフォルニア州リッチモンドに位置する研究フィールド内に,長さ約100mのトレンチを掘削し光ファイバセンサを直接埋設した。カケヤ振源により生じた表面波は,DASにより光ファイバに沿って1m間隔で計測された。その結果,光ファイバと被覆部の結合が強い構造のセンシングケーブルでは,端部まで明瞭に表面波の伝播が確認できる記録が得られた。一方で,結合の緩い通信用ケーブルでは後半部分においてノイズにより波形が不明瞭となり,光ファイバ周辺のケーブルの構造が感度に影響することが示唆された。しかし,低感度ケーブルについてもスタッキングすることで,SN比が改善し高感度ケーブルとほぼ同等の表面波が取得されることが確認できた。また,比較検証のため,3成分のジオフォンを用いて表面波の計測を行った。光ファイバと同方向の水平成分の計測からDASと類似の波形記録および位相速度分散曲線が取得された。

本研究により,浅層物理探査の解析で対象となる周波数帯域では,既存の地震計と概ね同等の性能でActive振源による表面波の計測が出来ることが示唆された。DASでは数10kmにわたり数m間隔でデータを同時に取得することが出来ることから,より幅広い対象への適用が期待される。