日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境リモートセンシング

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.11

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、石内 鉄平(宮城大学)

17:15 〜 18:30

[HTT18-P01] GOSAT/TANSO-FTSによる中上部対流圏および下部成層圏のオゾン濃度観測可能性の評価

*関 英人1、齋藤 尚子1 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:GOSAT、TANSO-FTS、オゾン、北極オゾン破壊

GOSAT(Greenhouse Gases Observing SATellite)に搭載されたTANSO(Thermal and Near-infrared Sensor for Carbon Observation)-FTS(Fourier Transform Spectrometer)の熱赤外(TIR)バンドで観測されたスペクトルから二酸化炭素のVersion 1プロダクトのバイプロダクトとしてオゾンの鉛直濃度プロファイルが導出されている[Saitoh et al., 2016]。本研究では、大規模なオゾン破壊が起こる極域に着目して、中上部対流圏および下部成層圏のTANSO-FTSのオゾン濃度データの特徴を解析し、高い高度分解能を持つ太陽掩蔽法センサーであるSciSat-1(Science Satellite)/ACE(Atmospheric Chemistry Experiment)-FTSのオゾン濃度データと比較に基づいてTANSO-FTSのオゾン濃度データの検証を行った。

まず、2009年から2014年について、極域のデータとして緯度70°N~80°NのTANSO-FTSのオゾン濃度データを抽出し、一か月を10日ごとに3つに分けて、オゾン濃度の帯状平均値の変動を調べた。北極で大規模なオゾン破壊が起こった2011年の2、3月の下部成層圏(35−29 hPa)において、2011年のTANSO-FTSのオゾン濃度がリトリーバル処理の先験値[McPeters et al., 2007]より有意に低く、他の年と比べても低くなっていることがわかった。

次に、2011年の北半球高緯度について、経度15°ごとにより短い期間でTANSO-FTSのオゾン濃度データの平均値を計算し、オゾン破壊が起こっている/起こっていない領域に分けて解析を行った。ここでは、AURA/OMI(Ozone Monitoring Instrument)のオゾンカラムデータをもとにオゾン破壊が起こっている領域を判断した。オゾン破壊が継続的に観測されている2011年3月26日~31日の経度0~30°Eをオゾン破壊が起こっている領域とみなした。オゾン破壊が起こっている領域では下部成層圏でTANSO-FTSのオゾン濃度が先験値より大幅に濃度が低くなっており、オゾン破壊が起こっていない領域ではTANSO-FTSのオゾン濃度が先験値により近い濃度となっていた。さらに、2011年の北半球高緯度(60°N~70°N)のTANSO-FTSのオゾン濃度データとSciSat-1/ACE-FTSのオゾン濃度データを比較した。比較の結果、オゾン破壊が起こっている領域では、下部成層圏(60−20 hPa付近)においてTANSO-FTSのオゾン濃度が先験値と比べてよりSciSat-1/ACE-FTSのオゾン濃度に近い値を取っていることがわかった。このことから、GOSAT/TANSO-FTSのTIRバンドによる観測で極域のオゾン破壊の特徴を捉えられている可能性が示唆される。