日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 地理情報システムと地図・空間表現

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.14 (Zoom会場14)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)

09:45 〜 10:00

[HTT19-04] 森林映像アーカイブによる“Deep Wonder”の時空間拡張に関する考察

*中村 和彦1 (1.東京大学)

キーワード:サイバーフォレスト、環境教育、映像アーカイブ

森林をはじめとする自然環境と人間社会との繋がりの重要性が高まる昨今、ますます複雑化するその関係の望ましいあり方を科学的根拠のみに立脚して提示することは困難になっている。この状況において、科学的不確実性を含む自然現象に目を向けることの意義は、特に次世代育成の観点から教育学分野において、しばしばWonderという概念によって議論されている。Schinkel(2017)は、その教育的重要性について、単に動機づけの効果だけでなく、人間の理解の限界を認識させる効果も指摘し、特に後者を“deep wonder”と称し明確に区別して論じた。L’Ecuyer(2014)は、同様の視座からWonderの範囲を単なる好奇心を超えたものと捉えたうえで、それを誘発する環境の性質の一つとしてbeautyという可視表現を挙げた。持続可能な社会の構築に向けた重要課題である気候変動や生物多様性といった、時空間規模の大きい事象に取り組むにあたっては、科学的不確実性を含むことを避け難い点で “deep wonder”の視座が重要となる一方で、それを可視表現として直接的に体験することは困難を極める。そこで本発表では、時空間規模の大きな事象を擬似的に可視表現しうる方法論について、1995年から25年以上にわたって継続されている森林映像アーカイブを事例として、“deep wonder”の擬似的な拡張の可能性を考察する。

引用文献:
L’Ecuyer, C. (2014): The Wonder Approach to learning. Front. Hum. Neurosci. 8:764. doi: 10.3389/fnhum.2014.00764
Schinkel, A. (2017): The Educational Importance of Deep Wonder. Journal of Philosophy of Education, 51: 538-553. doi: 10.1111/1467-9752.12233