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[HTT19-05] GPSを用いた小学生の登下校空間の分析:富山市の30校を事例に
キーワード:GPS、児童、通学路
富山市ではスマートシティ事業として2018年度にLPWAを用いた無線ネットワーク網を構築した。この通信インフラを用いて、こどもを見守る地域連携事業を行っている。2018年度から5年間をかけて市内全64校の小学校児童に協力してもらい、GPSセンサーをランドセルに装着して登下校してもらうことで、登下校の様子を位置情報から把握し、通学路の安全について検討することになった。本研究では2018~2020年度で得られた児童の位置情報データを活用して、通学路の安全や通学に関する地域的な傾向を読み取り、地域特性と児童の活動空間の広がりの関係性について分析することを本研究の研究目的とした。取り上げる小学校は2018~2020年度に当該事業でデータが得られた30校の児童の登下校の位置情報のデータである。GPSは1分間隔のデータで、それをGIS上で可視化、分析した。登校はほとんどの小学校で集団登校を実施しており、通学路を利用し、学校の玄関の開く7:45前後をめがけて登校してくることがわかった。その結果、学校周辺に児童の滞留する地点が現れ、その部分の交通安全などへの配慮が必要であることが改めてわかった。また、歩道橋や大きな交差点では児童が滞留することがわかる。また、学校区が広域の場合、児童の朝の登校開始時刻に大きな違いがあることなどもわかった。それに対して下校については学年別に下校時刻が異なること、放課後に学童保育や習い事などへの送迎の開始時刻が学年や地区により異なることがわかった。中心市街地から遠い地域では放課後、学校から直接、ランドセルごと習い事などへ保護者と共に出かけたり、低学年では預かり時間が長い学童保育まで公共交通や送迎で移動したりする様子が顕著に見られ、中心市街地に近い学校では、それらの活動が学校区内で留まったり、一度、自宅に帰宅してから次の活動に入ることができることがわかった。ただ、校外の学校区でもそれらの活動が自宅に帰宅した後に行われることがわかる地区もあり、そこは多世代の同居や近居が行われていることからそのような結果になったことが推定される。このように中心市街地からの距離に応じて、児童の放課後の活動空間の質や広がりが異なることが明らかとなった。