日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 地理情報システムと地図・空間表現

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.14 (Zoom会場14)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)

10:15 〜 10:30

[HTT19-06] 超解像度赤色立体地図による地形認識の新たな展開

*千葉 達朗1、大橋 真1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:赤色立体地図、地形表現、GIS

1.はじめに
 近年、航空レーザ計測による高精細なDEMが利用できるようになってきた。日本国内で広く公開されている基盤地図情報の標高データにも、解像度が約5mのレーザ計測成果が含まれ、地形の理解に役立ってきた。赤色立体地図(千葉ほか,2004)は、斜度図に改良を加えたものであり、高度情報を含まない。等高線図と重ねることで、地形をよりわかりやすくすることができる。しかし、5mメッシュの赤色立体地図を、地理院地図のレベル15の図と重ねた場合に、赤色立体地図のジャギーが目立ち、わかりにくい点が問題であった。レベル15の地図画像の解像度は約50cmであり、約10倍の違いがあるためである。画像処理による高解像度化でも状況は改善しなかった。
 そこで、あらかじめ地形データを内挿補間と移動平均で超解像度化し、その後に赤色立体地図を作成する手法を検討したところ、ジャギーが解消し、立体感が向上したので報告する。ここでは、この手法の基本的な流れと、いくつかの作成事例を報告する。ESRIのUC2020のマップギャラリーでも公開をした(chiba & ohashi,2020)。

2.作成手法
 格子データをXY方向ともにn分割する。nは奇数であることが望ましい。内挿補間法は経験上バイリニアがよい。その後、移動平均をとる。ジャギーが目立たなくなるまで繰り返す。移動平均処理はくりかえすほどなめらかとなるが、当初の高度からずれることになる。その後、赤色立体地図の作成を行う。たとえばn=9の場合、データの量は81倍に膨らむ。地上開度や地下開度の考慮メッシュ数もn倍となるので計算時間は増加する。

3.利用事例
 横浜市旭区での、5m解像度の赤色立体地図画像と超解像度処理後の赤色立体地図画像の比較を示す(図1)。宅地造成地区では、直角に交わる道路の状況、周辺の丘陵地区では、斜面の形状が、同時にわかりやすくなった。また、棚田の地形の再現性も超解像度DEMが勝っている事例を、ESRI-UC2020のマップギャラリーでWebGIS公開した2)。 

4.まとめ
 超解像度赤色立体地図を利用することで、地形がなめらかでわかりやすくなり、地理院地図と重ねた場合に、地形の視認性が高まることがわかった。山城の微地形の可視化などでも利用を進めている。なお、計算時間が従来の100倍近くかかる点が難点である。

引用文献
1)千葉達朗・鈴木雄介(2004)赤色立体地図―新しい地形表現手法―、応用測量論文集,15,81-89.
2)Chiba T. and Ohashi M. (2020)Red Relief Image Map using Hyper Resolution DEM,ESRI map gallery,https://mapgallery.esri.com/map-detail/5efa4698f3b616cb34d9e11e