14:15 〜 14:30
[MAG38-03] 長期観測でみる福島原発事故後の90Srおよび137Csの時系列変化と将来予測
★招待講演
キーワード:環境放射能、福島、大気、再飛散、沈着、降下
過去、大気圏内核実験や原子力発電所事故により、環境中(大気、陸域、海洋)に様々な人工放射性物質が放出された。我々のグループでは大気を通じて沈着する人工放射能(特に90Srと137Cs)の月間降下量について、1957年より継続して関東平野での観測を続けている。その結果、大気圏内核実験や原子力発電所事故に起因する90Srおよび137Csの時間変動を明らかにし、それらの環境中における拡散・沈着・再飛散といったプロセスを明らかにしてきた(図)。2011年3月には福島原子力発電所事故が発生し、我々の観測サイトであるsite A(関東平野内の都市域)とsite B(関東平野の北西端にある榛名山頂上付近)において、90Sr および137Cs月間降下量の大きなピークを観測した。本研究では、1957年から現在に至るまでの90Srおよび137Csの月間降下量観測結果について、特に福島原発事故後に着目して示し、134Csおよび各種安定元素・同位体(Na, Mg, Al, K, Ca, Ti, Mn, Fe, Ni, Cu, Zn, Sr, Ba, 9Be, 133Cs, 232Th, 238U)の測定結果も交えて、現在の再飛散プロセスの推定と将来的な減衰予測を行った。
福島原発からのプリュームがsite Aに到達した際には、90Srおよび137Csはそれぞれ2.7×103倍と3.2×106倍にまで上昇した。この時、137Csのピークは大気圏内核実験やチェルノブイリ発電所事故と比較しても高かった一方、90Srは大気圏内核実験時に比べて低かった。2018年における月間降下量は、137Csではsite AとBでそれぞれ、事故当時の1/8100と1/4500程度まで下がってきたが、事故前と比較すると、それぞれ400倍と130倍の濃度となっていた。134Cs観測値から、現在も137Csのほとんどが福島事故に起因するものと考えられる。一方で、90Srは両地点で事故以前と同じレベルまで下がっており、事故の影響はほぼ残っていないことが分かった。安定元素・同位体の分析結果より、site Aでは90Srと137Csの両方ともが鉱物ダストにより再飛散していることが示された。一方で、site Bでは、90Srは森林の働きによる循環が重要であることが示唆されたが、137Csの環境中プロセスはわからなかった。137Csの環境中半減期は、site AとBそれぞれで4.7年と5.9年と推定され、事故前のレベルに戻るまでに事故から起算して42年と48年が必要であることが示唆された。
福島原発からのプリュームがsite Aに到達した際には、90Srおよび137Csはそれぞれ2.7×103倍と3.2×106倍にまで上昇した。この時、137Csのピークは大気圏内核実験やチェルノブイリ発電所事故と比較しても高かった一方、90Srは大気圏内核実験時に比べて低かった。2018年における月間降下量は、137Csではsite AとBでそれぞれ、事故当時の1/8100と1/4500程度まで下がってきたが、事故前と比較すると、それぞれ400倍と130倍の濃度となっていた。134Cs観測値から、現在も137Csのほとんどが福島事故に起因するものと考えられる。一方で、90Srは両地点で事故以前と同じレベルまで下がっており、事故の影響はほぼ残っていないことが分かった。安定元素・同位体の分析結果より、site Aでは90Srと137Csの両方ともが鉱物ダストにより再飛散していることが示された。一方で、site Bでは、90Srは森林の働きによる循環が重要であることが示唆されたが、137Csの環境中プロセスはわからなかった。137Csの環境中半減期は、site AとBそれぞれで4.7年と5.9年と推定され、事故前のレベルに戻るまでに事故から起算して42年と48年が必要であることが示唆された。