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[MAG38-09] 北太平洋の縁辺海の表層海水における東電福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムの10年間の挙動
キーワード:東京電力福島第一原子力発電所事故、放射性セシウム、亜熱帯循環、輸送、半減時間
東京電力福島第一原子力発電所(FNPP1)の事故後、北太平洋西部の広域でセシウム137放射能濃度が急激に上昇した後、急激に低下あるいはFNPP1からの距離に応じて徐々に低下したりした。北太平洋の縁辺海(日本海、東シナ海)では、セシウム137放射能濃度の上昇には遅れが観測され、時間変化の特徴は北太平洋とは異なっていた。一見してわかるセシウム137放射能濃度変動の特徴は、小笠原では2012年から徐々に下がって、最近では日本海と同じか低いくらいとなり減少の時定数が大きい。しかし、日本海南部では2016年に極大となりその後2020年まで徐々に減少している。しかしもっと南で東シナ海入り口にあたる与那国島付近ではほとんどセシウム137放射能濃度は2017年から2020年では変化しなかった。放射壊変による放射能を補正した後の移流拡散のみでの見かけの半減時間は小笠原海域では2012-2020年の期間では18.9年、2016-2020年だと12.3年となるのに対し、日本海南部では2016-2020年の期間で22.4年とすこし長くなる。それに対し与那国島付近では2017-2020年の期間では変わらないあるいはわずかな増加が認められる。また与那国島付近では134Cs/137Cs比が上昇傾向にあり、2020年には小笠原や日本海での134Cs/137Cs比と同じ程度の0.5となっている。これらの輸送は、主に北太平洋の海流システムである亜熱帯循環に従っている。東シナ海北部と日本海への放射性セシウムの輸送については、亜熱帯循環内のFNPP1由来の放射性セシウムの一部が西に移動し、東シナ海の海底に到達したあと表層にabductして日本海に輸送された。亜熱帯循環の主な経路による与那国島付近への輸送プロセスは、前述のように日本海への内部経由のショートカットと比較すると時間がかかったと考えられる。