日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI35] 計算科学が拓く宇宙の構造形成・進化から惑星表層環境変動まで

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.18 (Zoom会場18)

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、井田 茂(東京工業大学地球生命研究所)、座長:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、小久保 英一郎(自然科学研究機構国立天文台科学研究部)、斎藤 貴之(神戸大学)

12:00 〜 12:15

[MGI35-12] 現実的な合体条件を用いた岩石微惑星の集積過程

*柴田 雄1、小久保 英一郎1,2、牧野 淳一郎3、石城 陽太2 (1.国立天文台、2.東京大学、3.神戸大学)

キーワード:惑星形成、微惑星集積、微惑星の合体条件

地球型惑星、氷惑星、およびガス惑星のコアは、微惑星の集積によって形成されると考えられている。原始太陽の周りの限られた数の微惑星は、自己重力のために急速に成長する。この成長モードは暴走成長と呼ばれる。暴走する微惑星による重力散乱により、微惑星系は加熱され、暴走微惑星への微惑星衝突の数は減少する。この段階は、微惑星の寡頭的成長と呼ばれる。惑星形成の素過程である微惑星の集積過程を知ることは、惑星の形成過程を知る上で不可欠である。微惑星衝突時の合体と跳ね返りを区別するための現実的な合体条件が正しく考慮された微惑星集積過程の研究は存在しない。跳ね返りは集積過程に大きな影響を及ぼすと予想される。N体計算を使用した微惑星の集積過程の研究は、これまでにも存在するが、それらは原始惑星の合体条件のような、微惑星集積においては必ずしも現実的ではない条件を使用してきた。したがって、現実的な微惑星の合体条件を知る必要があり、我々はすでに前の論文でそれを示した。そこで、N体計算を使用し、現実的な合体条件を用いた微惑星の集積過程を研究する。 N体計算コードのGPLUM(Global PLanetary system simulation code with Mass-dependent cut-off method)を使用する。N体計算では微惑星の軌道を直接計算するため、集積過程における微惑星の質量、速度、空間分布の変化を調べることができる。本研究では、前研究で得た微惑星の合体と跳ね返りを区別するための合体条件を、GPLUMに適用する。 20万個の100 kmサイズの岩石微惑星を太陽の周りに狭いリングとして設定し、微惑星の軌道を計算する。跳ね返りを考慮した場合と、衝突するすべての微惑星が合体する完全合体の結果を比較する。微惑星はいずれの場合も同様に成長するが、跳ね返りを考慮した場合、周囲の微惑星が全て合体するまでの時間が長くなる傾向が見られる。また、微惑星の成長は跳ね返りによって妨げられるため、質量分布が二極化する。これにより、暴走成長と寡頭成長は、完全合体の場合に比べて顕著になる。本講演では、跳ね返りを考慮した場合の現実的な微惑星集積過程について議論する。また上記に加え、微惑星集積時の自転角運動量の集積の結果も示し、原始惑星の自転についても議論する。