17:15 〜 18:30
[MGI35-P04] 回転球殻熱対流により引き起こされる表面縞状構造への超粘性の影響
キーワード:木星型惑星、縞状構造、回転対流
木星型惑星(木星・土星)表層大気の力学的な特色である縞状パターンはこれまでに多くの大気科学研究者の関心を引いてきたが,現在のところ,これらの特徴を矛盾なく整合的に説明できる満足な力学的描像と理解は得られてはいない。本研究は,全球規模から微細規模対流までにわたる空間スケールを統一的にあつかう大規模数値計算を実行し,従来の数値モデルでは表現できなかった微細規模の対流や乱流の構造を解像し,木星型惑星大気に見られる表面流の大規模構造の力学的成因を解明することを目指している。
木星型惑星大気の縞状パターンを説明する有力なモデルカテゴリーの一つは流体層の厚さが惑星半径に匹敵する一連の「深い」モデルである。高速回転する球殻中の熱対流が引き起こす帯状流により表層の縞状構造を説明することを試みるこのモデルでは,赤道域の順行するジェットは容易に生成されるものの,中高緯度の交互に表われるジェットの生成が困難であった。この問題に対してHeimpel and Aurnou (2007)(以下,HA2007)は,それまでに考えられていた深いモデルよりも薄い球殻領域内の深部対流運動を考え,レイリー数が十分大きく内球接円筒での対流が活発な場合に,赤道域の順行流と中高緯度の交互に現われる狭いジェットが共存する状態を数値的に再現した。この研究に引き続き,モデルを非弾性系へと拡張して同じような研究が現在にまで行われて縞状構造生成の説明が試みられてきている。しかしながら,これら一連の研究では経度方向に対称性を仮定しており,全球の一部のセクター領域の運動しか解いていない。加えて高速回転中の熱対流を解像するための計算資源の節約のために超粘性を導入し,水平高解像成分の散逸を人工的に高めている。散逸過程の性質の意図的な変更は生成される流れ場に大きく影響していることが予想されるが,その検証はきちんとなされていない。
そこで本研究では,HA2007 の設定のもとでの薄い回転球殻内のブシネスク熱対流の長時間数値計算を全球領域で遂行し,超粘性に対してのパラメター実験を行い,赤道域および中高緯度領域の帯状流の生成維持の様子を吟味した。プラントル数,エクマン数,修正レイリー数,内外半径比はそれぞれ 0.1,3x10-6,0.05,0.85 である。熱伝導定常静止状態にランダムな微小温度擾乱を初期条件として与えた。
超粘性の強さを変更して計算した結果は,いずれの場合も初期に赤道域の強い順行ジェットと中高緯度の縞状構造が生成され,木星型大気の表層パターンに似た帯状風分布が観察される。しかしながら,その後時間積分を続けると,すべてのケースで高緯度での縞状構造が消滅し,南北半球でそれぞれ 1 本の順行ジェットが出現した。
長時間積分で中高緯度の縞状構造が消滅したことは,木星・土星の帯状流が惑星深部の対流運動により直接的に生成されてはいない可能性を示唆する。
木星型惑星大気の縞状パターンを説明する有力なモデルカテゴリーの一つは流体層の厚さが惑星半径に匹敵する一連の「深い」モデルである。高速回転する球殻中の熱対流が引き起こす帯状流により表層の縞状構造を説明することを試みるこのモデルでは,赤道域の順行するジェットは容易に生成されるものの,中高緯度の交互に表われるジェットの生成が困難であった。この問題に対してHeimpel and Aurnou (2007)(以下,HA2007)は,それまでに考えられていた深いモデルよりも薄い球殻領域内の深部対流運動を考え,レイリー数が十分大きく内球接円筒での対流が活発な場合に,赤道域の順行流と中高緯度の交互に現われる狭いジェットが共存する状態を数値的に再現した。この研究に引き続き,モデルを非弾性系へと拡張して同じような研究が現在にまで行われて縞状構造生成の説明が試みられてきている。しかしながら,これら一連の研究では経度方向に対称性を仮定しており,全球の一部のセクター領域の運動しか解いていない。加えて高速回転中の熱対流を解像するための計算資源の節約のために超粘性を導入し,水平高解像成分の散逸を人工的に高めている。散逸過程の性質の意図的な変更は生成される流れ場に大きく影響していることが予想されるが,その検証はきちんとなされていない。
そこで本研究では,HA2007 の設定のもとでの薄い回転球殻内のブシネスク熱対流の長時間数値計算を全球領域で遂行し,超粘性に対してのパラメター実験を行い,赤道域および中高緯度領域の帯状流の生成維持の様子を吟味した。プラントル数,エクマン数,修正レイリー数,内外半径比はそれぞれ 0.1,3x10-6,0.05,0.85 である。熱伝導定常静止状態にランダムな微小温度擾乱を初期条件として与えた。
超粘性の強さを変更して計算した結果は,いずれの場合も初期に赤道域の強い順行ジェットと中高緯度の縞状構造が生成され,木星型大気の表層パターンに似た帯状風分布が観察される。しかしながら,その後時間積分を続けると,すべてのケースで高緯度での縞状構造が消滅し,南北半球でそれぞれ 1 本の順行ジェットが出現した。
長時間積分で中高緯度の縞状構造が消滅したことは,木星・土星の帯状流が惑星深部の対流運動により直接的に生成されてはいない可能性を示唆する。