日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS07] Effects of lightning, severe weather and tropical storms

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:佐藤 光輝(北海道大学 大学院理学研究院)、久保田 尚之(北海道大学)、C. Glenn Vincent Lopez(---)、Purwadi Purwadi(Department of Cosmosciences, Hokkaido University, Sapporo 0600810, Japan)、座長:佐藤 光輝(北海道大学 大学院理学研究院)、久保田 尚之(北海道大学)

11:15 〜 11:30

[MIS07-03] 機械学習を用いたフィリピン・マニラ首都圏における降雨の直前予測

★招待講演

*野田 明羅1、高橋 幸弘2、久保田 尚之2、福井 健一3、佐藤 光輝2 (1.北海道大学理学部地球惑星科学科、2.北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻、3.大阪大学産業科学研究所)

キーワード:極端豪雨、機械学習、メソスケール

地上や宇宙からの気象観測と数値モデルによる気象予報が充実している日本にあっても、ゲリラ豪雨や台風に伴う降水帯、線状降水帯といった、豪雨を伴う極端気象の発生と降水量を正確に予報することは困難を極める。この原因の一つとして、これら極端気象の降雨領域の空間的狭さや発達時間の速さが、従来の気象観測網が有する時間空間分解能を超えている点が挙げられる。さらに、気象観測インフラが脆弱な東南アジア域においては、毎年のようにモンスーンや台風に伴う豪雨や洪水などの災害に見舞われており、低コストで実行性の高い気象予報技術の確立が急務となっている。近年、計算機の処理速度の向上やビッグデータの恩恵を受けて、機械学習技術の発展が著しい。加えて、気象分野においても、機械学習を用いた予報手法の開発に関する研究が精力的に進められている。そこで我々の研究グループは、2017年からP-POTEKAと呼ばれる自動気象・雷観測装置を開発し、豪雨やそれに伴う洪水の被害が多発しているフィリピンのマニラ首都圏に配備を進めている。現在までにマニラ首都圏に35式のP-POTEKAの設置が完了しており、降水量や気温、気圧、湿度、風速、風向、太陽放射照度の気象データを1分毎に取得し続けている。日本における自動気象観測装置(AMeDAS)は平均して約17kmの間隔で配備されているが、マニラ首都圏のP-POTEKAは約2-3kmの間隔で設置されていることから、極端気象を捉えるのに適した、世界最高レベルの時間空間分解能を有する観測網といえる。P-POTEKAの降水データを用いて、さらに、通常クリギング手法と呼ばれるデータの空間的な自己相関から未知の地点におけるデータを近似計算する内挿手法を用いてデータを内挿することで、マニラ首都圏における降雨空間分布に対応するRGB画像データを作成した。この降雨の時系列画像データをConvLSTM(Convolutional Long-Short Term Memory)と呼ばれる機械学習モデルに学習させることで、過去1時間の観測データを基に、現在から1時間後までの降水分布と降水量を10分間隔で予測を行った。予測降水分布と実観測降水分布とで対応するピクセルのRGB値の平均平方二乗誤差(RMSE)を、未学習の降雨(40パターン)に対して計算して、本研究の機械学習手法の性能の評価を行った。この結果、ConvLSTMを用いた予測では、現時点から30分までは比較的精度高く予測できるが、40-60分後は降水の時空間変化の予測精度が著しく悪くなることが判明した。本発表では、ConvLSTMを用いた機械学習手法モデルの詳細と、降水量や降水分布の予測結果についてより詳しく説明する。