17:15 〜 18:30
[MIS07-P03] 雷放電の電気的特性と台風の強度変化の関係性の推定
キーワード:雷放電、台風、ELF、電荷モーメント変化量
台風の進路予報の精度は年々改善されているが, 中心気圧や最大風速といった台風強度の予報精度は改善傾向が見られず, 長年の課題となっている. 近年, 台風内部の雷活動を監視することによって台風強度の発達を予測することが可能とする結果が示された. しかしこれらの研究では, 雷放電の発生頻度と台風の強度変化とを比較しており, 雷放電の電気的特性に着目した先行研究はほとんどない. 雷放電の発生頻度に加え, 電気的特性もダウンバーストなどのシビア現象を引き起こす雷雲の発達に関係があることが報告されており, 台風においても同様の特徴が見出される可能性がある.
そこで本研究では, 台風の強度発達と雷放電の電気的特性との関係性を明らかにするとともに, 雷放電発生数と電気的特性のどちらの物理量がより台風強度発達の予測に有効な指標であるかを検証することを目的とする. このため, (1) 地上雷観測網データを用いて台風の内部コア, レインバンドそれぞれで発生した雷放電を特定し, (2)全球ELF 波動観測網で得られた磁場波形データを用いて台風で発生した雷放電による過度ELF 波動を同定する. (3) それらによって雷放電の電気的特性を推定し, 台風の強度との相関解析を行う. 解析において, 米軍合同台風警報センター(JTWC), World Wide Lightning Location Network (WWLLN), Global ELF Observation Network (GEON) の南極昭和基地と久住で得られた2013-2014 年のデータを用いた. 気象庁の分類で普通サイズの台風は, 内部コアとして中心から半径100 km 以内, レインバンドとして半径100km から500 km の領域, 大型の台風は内部コアと半径200 km 以内, レインバンドを半径200 km から1000 km の領域と定義した. 電気的特性としてはピーク電流値, 電荷モーメント変化量(CMC), 電荷量をELF データから推定した. 昭和基地のELF 帯磁場波形からピーク電流値とCMC, 久住で観測されたELF 帯磁場波形からは電荷量を推定した. 以上の手法を用い, 2013 年から2014 年にかけて発生した40 個の台風を対象に強度発達と雷放電の電気的特性を比較した.
解析の結果, 29 個の台風で, 発生期に正極性雷放電の電気的特性の中央値が一度ピークを迎えることが分かった. 発生期には積乱雲の発生が活発になり, それらが併合することで台風の卵となるクラウドクラスターが形成される. この複数の積乱雲が併合する際に,雲頂が対流圏界面に達して上層の雲が外に広がり, 外方向に張り出した上層の正電荷域, あるいは形成された層状域で放電距離の長い雷放電が発生するためと考えられる. また, 解析対象の強い台風(強度4, 5) 12 個のうち11 個の台風の内部コアにおいて, 発達期に負極性の電気的特性の積算値, 中央値がピークを迎えた. 発達期, 特に強い台風においては, 壁雲内の対流強度が強まり, 壁雲内の負電荷領域が上層へ輸送される. 強力な上昇気流が存在すると大きな電荷が蓄えられ, また帯電粒子が対流領域に集中することで絶縁破壊電圧が低下し, 放電距離が長い負極性雷放電の発生頻度が上昇するためと考えられる. 強い台風の発達期における負極性の雷放電の電気的特性のピークは台風強度が最大になる1-2 日前に出現し, 雷放電数と同様に負極性電気的特性が台風の台風の最大風速を予報する上で有効である可能性が示された.
そこで本研究では, 台風の強度発達と雷放電の電気的特性との関係性を明らかにするとともに, 雷放電発生数と電気的特性のどちらの物理量がより台風強度発達の予測に有効な指標であるかを検証することを目的とする. このため, (1) 地上雷観測網データを用いて台風の内部コア, レインバンドそれぞれで発生した雷放電を特定し, (2)全球ELF 波動観測網で得られた磁場波形データを用いて台風で発生した雷放電による過度ELF 波動を同定する. (3) それらによって雷放電の電気的特性を推定し, 台風の強度との相関解析を行う. 解析において, 米軍合同台風警報センター(JTWC), World Wide Lightning Location Network (WWLLN), Global ELF Observation Network (GEON) の南極昭和基地と久住で得られた2013-2014 年のデータを用いた. 気象庁の分類で普通サイズの台風は, 内部コアとして中心から半径100 km 以内, レインバンドとして半径100km から500 km の領域, 大型の台風は内部コアと半径200 km 以内, レインバンドを半径200 km から1000 km の領域と定義した. 電気的特性としてはピーク電流値, 電荷モーメント変化量(CMC), 電荷量をELF データから推定した. 昭和基地のELF 帯磁場波形からピーク電流値とCMC, 久住で観測されたELF 帯磁場波形からは電荷量を推定した. 以上の手法を用い, 2013 年から2014 年にかけて発生した40 個の台風を対象に強度発達と雷放電の電気的特性を比較した.
解析の結果, 29 個の台風で, 発生期に正極性雷放電の電気的特性の中央値が一度ピークを迎えることが分かった. 発生期には積乱雲の発生が活発になり, それらが併合することで台風の卵となるクラウドクラスターが形成される. この複数の積乱雲が併合する際に,雲頂が対流圏界面に達して上層の雲が外に広がり, 外方向に張り出した上層の正電荷域, あるいは形成された層状域で放電距離の長い雷放電が発生するためと考えられる. また, 解析対象の強い台風(強度4, 5) 12 個のうち11 個の台風の内部コアにおいて, 発達期に負極性の電気的特性の積算値, 中央値がピークを迎えた. 発達期, 特に強い台風においては, 壁雲内の対流強度が強まり, 壁雲内の負電荷領域が上層へ輸送される. 強力な上昇気流が存在すると大きな電荷が蓄えられ, また帯電粒子が対流領域に集中することで絶縁破壊電圧が低下し, 放電距離が長い負極性雷放電の発生頻度が上昇するためと考えられる. 強い台風の発達期における負極性の雷放電の電気的特性のピークは台風強度が最大になる1-2 日前に出現し, 雷放電数と同様に負極性電気的特性が台風の台風の最大風速を予報する上で有効である可能性が示された.