日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] Interdisciplinary studies on pre-earthquake processes

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.19

コンビーナ:服部 克巳(千葉大学大学院理学研究科)、Ouzounov Dimitar(Center of Excellence in Earth Systems Modeling & Observations (CEESMO) , Schmid College of Science & Technology Chapman University, Orange, California, USA)、劉 正彦(国立中央大学太空科学研究所)、Qinghua Huang(Peking University)

17:15 〜 18:30

[MIS08-P04] LF帯地震前兆電磁放射観測のための広帯域アンテナシステムの開発と初期観測結果

*三浦 健伸1、服部 克巳1、吉野 千恵1、今住 則之2、森本 健志3、中村 佳敬4 (1.千葉大学、2.日本技術士会千葉県支部、3.近畿大学、4.神戸市立工業高等専門学校)

キーワード:地震、雷放電

地震に先行する電磁現象の一つとしてLF帯の電磁パルス増加が報告されている。Oikeらは1995年の兵庫県南部地震(M7.2)の前に、地震前兆とみられるパルス増加を見出した。一方で、これらのパルス増加の一部は、雷の影響が強いことが示唆されており、雷による電磁パルスと地震前兆電磁パルスの弁別が課題である。そこで本研究では、それらのパルスの弁別のために、詳細なパルス波形が記録可能なLF帯電磁波の観測システムを開発し、パルス数と地震の関係の調査及び地震前パルス波形の解析を行い、地震前兆パルスの特徴抽出を試みた。

観測システムは容量型円形平板ファストアンテナ、500 kHz ローパスフィルタ、16 bit ADコンバータ、データ収録用PCで構成され、4 MHzサンプリングでトリガレベル(Vpp=6000[d.u.])を超えたパルス波形の前後100 ms を記録する。システムは千葉大学理学部5号館屋上に設置した。解析期間は2018年5月1日から2019年5月31日である。

まず、観測システムに記録された全パルス数をカウントし、振幅ヒストグラムを作成し、上位15%のパルス(Vpp28880[d.u.])を対象とし、1時間毎のパルス数の変動を調査した。全解析期間の平均値mと標準偏差σを計算し、パルス数の異常をm+2σで定義した。次に、パルス波形と対地雷標定ネットワークblitzortung.org を用い、対地雷放電に起因する波形(近地雷と遠地雷)を同定した。観測期間中に発生した、震央距離100 km以内、log(Es)>8を満たす7個の地震を解析対象とした。ここでEs=101.5M+4.8/r2 (M:マグニチュード, r:震源距離)である。その結果、2018年11月27日のM5.0の地震の4日前に対地雷と無関係なm+2σ以上のパルス数の異常増加が観測された。同様のパルス波形はm+2σの閾値は超えないものの、観測期間中に発生した他の4個のlog(Es)>8の地震の前にも観測されており、これらのパルスは地震前兆電磁放射によるパルスの可能性がある。一方、雲内放電によるパルス波形である可能性も考えられ、雲内放電による電磁放射と地震前兆電磁放射の弁別には、干渉計による電磁放射位置標定が必要となることがわかった。