日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 惑星火山学

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.02 (Zoom会場02)

コンビーナ:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

09:30 〜 09:45

[MIS12-03] ケニアのエムルアンゴゴラク火山南西に見られるルートレスコーンについて

*野口 里奈1 (1.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:ルートレスコーン、ケニア、火星、エムルアンゴゴラク火山

ルートレスコーン(シュードクレーターとも)の形成条件は未だ謎に包まれている。単純には、高温溶岩と外来水の爆発的な接触作用が連続する(以降、ルートレス噴火)ことで形成されると説明されている。そのため、ルートレスコーンは火山活動だけでなく水(氷)の存在を示すものであり、火星上の候補地形は形成当時の火山活動・地下氷の存在を示唆する地形として重要視されている(例えば、Greeley and Fagents, 2001)。ルートレス噴火は高温溶岩と外来水が接触する場で必ず発生するわけではない。例えば、2014~2015年のアイスランドのホルフロインにおける一連の噴火活動では大量の溶岩が氷河性河川に流入したが、コーンを形成するようなルートレス噴火は生じなかった(Dundas et a., 2020)。ルートレス噴火の形成条件を制約するためには、ルートレスコーン形成環境の詳細な調査が必要である。

 本研究ではケニアのエムルアンゴゴラク火山南西部にみられるルートレスコーンフィールドのリモートセンシングデータ解析を行った。エムルアンゴゴラク火山はリフトバレー内にある楯状火山である。当該火山は、1) 5 x 3.5 kmの山頂カルデラ、2) 北北東・南南西山腹およびカルデラ内における玄武岩~粗面岩質溶岩流、3) NNE-SSWトレンドで分布する側火山群で特徴付けられる。山体西側には季節性河川であるスグタ川があり、山体南西部には小さい池が点在している。先行研究ではルートレスコーンの存在が報告されてはいる(Dunkley et al., 1993)ものの、その分布や大きさなどの記載はなされていない。そこで、本研究ではGoogle Earth Pro上で利用可能な超高解像度(~1m/pixel)衛星写真を用いてルートレスコーンの地理的分布、山体直径および火口径の記載を行った。

 調査により、エムルアンゴゴラク火山南西部では919個のルートレスコーンが認められた。分布領域は北・東・西に大別される。これらは後続の溶岩流によって分断されている。ルートレスコーンの分布する溶岩は、Dunkley et al., 1993によって更新世後期から現在に形成された”Upper Basaltic Lavas”として記載されている。いくつかのコーンは後続の溶岩流や河川堆積物により破壊・埋積されており、形成当初はより多くのコーンが存在したと推測される。ルートレスコーンの基底径は3.9 mから164.4 mで、平均28.2 mであった。火口径は1.4 mから98.0 mであり、平均14.2 mであった。また、火口径と直径の比は0.15から0.75で、平均0.5であった。発表では、これら形状について、地球や火星でみられる他の地域のルートレスコーンとの比較結果を紹介する。