日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 水惑星学

2021年6月5日(土) 13:45 〜 15:15 Ch.02 (Zoom会場02)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)

14:45 〜 15:00

[MIS14-11] 非晶質マグネシウム炭酸塩の溶解度:初期火星の閉塞湖におけるMg炭酸塩の希少性

*北島 卓磨1、福士 圭介2、関根 康人2,3、依田 優大3,4、ガンフレル バーサンスレン1、ダバースレン ダバードルジ5 (1.金沢大学大学院、2.金沢大学環日本海域環境研究センター、3.東京工業大学地球生命研究所、4.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、5.モンゴル国立大学)


キーワード:溶解度、非晶質マグネシウム炭酸塩

近年、探査ローバーによる化学的・鉱物学的分析や探査機による高解像度のリモートセンシング観測の進歩により、初期火星の水環境や地球化学的循環が明らかになってきている。広大な谷地形や湖沼堆積物、粘土鉱物などの証拠から、初期火星は液体の水が存在する半乾燥気候であったと考えられている(Ehlmann et al., 2014)。初期火星の水は現在よりも温暖な気候によって維持されていたとされており、そのような温暖気候はCO2が多い大気に加え、H2やCH4などの温暖化効果ガスの影響によると考えられている(David et al., 2017; Wordsworth et al., 2017)。

 現在の地球において、一般的に半乾燥地域の閉塞湖ではモノハイドロカルサイトや非晶質マグネシウム炭酸塩(AMC)といった炭酸塩が自生している(Fukushi and Matsumiya, 2018。また、アルカリ塩湖などの閉塞湖は大気中のCO2を吸収し、炭酸塩として固定する役割を果たしている。液体の水が存在した初期火星にも塩湖やアルカリ湖のような閉塞湖が存在したとすると、炭素循環において大気から炭素を固定する役割を果たしていたと考えられる。探査機Curiosityが調査中のGale Craterはかつて閉塞湖であったことが先行研究で示唆されている(Fukushi et al., 2019)。火星は苦鉄質の岩石が広域に分布しており、リモートセンシング観測によってMg炭酸塩やFe炭酸塩が見つかっていることからも、初期火星でのMg炭酸塩の生成が推測されている。しかしながら、探査機CuriosityによるGale Craterの湖沼堆積物分析結果からはMg炭酸塩を含め、炭酸塩がほとんど見つかっていない。AMCはハイドロマグネサイトやマグネサイトなどの前駆物質であるため、初期Gale湖におけるMg炭酸塩の稀少性は、高CO2分圧の大気が存在するにもかかわらず効果的なAMC生成が生じなかった可能性を示唆している。

 本研究では、初期火星の閉塞湖と類似していると考えられる、モンゴルの寒冷・半乾燥気候地域における閉塞湖を対象とした野外調査を行った。また、寒冷環境の閉塞湖におけるAMC生成の理解へむけて、低温条件下でのAMCの溶解度に関する実験を行った。