日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 水惑星学

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.22

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

17:15 〜 18:30

[MIS14-P11] 氷点下での塩基性-超塩基性岩の弾性波速度測定:火星内部での氷から水への相転移による反射面の形成に関する考察

*若林 春那1、片山 郁夫1 (1.広島大学)

キーワード:火星、反射率、弾性波速度

火星の表面には過去に大量の水が存在していたことが指摘されており、生命が存在した可能性が期待されている。しかし現在の火星は乾燥しており、平均表面温度は-50℃程度であるため、水は氷床や地下深部の雪氷圏に主に氷として存在している。一方で、火星は地球に比べて重力が小さく岩石が圧縮されにくいため、地下深部まで高い空隙率を保持しており、熱流量からも地下で氷から水への相転移が起きていることが予測される。そのため、本研究では岩石中の氷から水への相転移における弾性波速度を測定し、火星での反射法地震波探査によって、地下に存在する水が検出可能かを検証する。
弾性波速度を測定する試料として、火星の基盤岩として考えられているダイアベース(輝緑岩)、かんらん岩、蛇紋岩を用いた。弾性波の測定は、乾燥条件、含水条件、そして-55℃の氷点下条件で行った。測定で、空隙率により弾性波への効果をみるため、サーマルクラックを導入した試料を用いた。なお、空隙率はダイアベースではIntactで0.14%、600℃で0.55%、800℃で1.17%、かんらん岩ではIntctで0.32%、600℃で1.32%、800℃で1.7%となった。弾性波速度は、試料に共振周波数2MHzの圧電素子を圧着し、パルス透過法により算出した。
 いずれの岩石試料においても弾性波速度は空隙率の増加に伴い減少し、空隙が水で満たされることによって速度は上昇し、氷点下条件では最も速い速度を示した。またVpVs比を算出したところ、空隙率の増加に伴い乾燥条件では減少傾向、含水条件では増加傾向、氷点下条件では変化しない傾向がみられた。これらの結果を用いて、有効媒質理論を(Kuster and Toksoz 1974)から空隙のアスペクト比(短軸/長軸)を推定したところ、アスペクト比0.01のクラックと実験データが最も調和的であった。今回の速度測定の結果を用いて音響インピーダンス(密度×弾性波速度)を算出し、火星地下内部での氷-水相転移が起きていると予測されている地下5kmでの反射率を算出した。その結果、氷-水相転移面での反射率はダイアベースで0.269、かんらん岩で0.319となった。このように氷から水への相転移が起きている場合、地震波の高い反射率が期待され、今後火星での地震波探査が行われた場合、水の存在を明らかにすることができるかもしれない。