14:15 〜 14:45
[MIS15-02] 日本海溝沿いにおける海溝型巨大地震の履歴はどこまでわかったか ―震災後の発展と残された課題―
★招待講演
キーワード:海溝型巨大地震、津波堆積物、日本海溝
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震には「想定外」という言葉が繰り返し使われ,地震発生直後には「全く予想できなかった地震であった」と報道された.一方で,東北大学や産業技術総合研究所(以下,産総研)の研究グループによって西暦869年貞観地震・津波の地質学的研究がなされており,東北地方太平洋沖地震は決して予想できなかったものではないことが注目された.
貞観地震・津波の地質学的研究は,1990年代初頭の阿部ほか(1990地震)やMinoura and Nakaya (1991 J. Geol.)まで遡る.箕浦らの研究は,その後に菅原ほか(2001津波工学研究)に継承されていくが,津波堆積物の分布や地殻変動の証拠を広域で明らかにすることはできなかった.菅原らの研究と同時期に,産総研の研究グループは,石巻平野,仙台平野,福島県沿岸において群列サンプリングを行い,貞観津波による津波堆積物の平面的な広がりを示すとともに,福島県沿岸における地殻変動の証拠も示した(Sawai et al. 2012 GRL).これらの地質学的に証拠を基に,佐竹ほか(2008活断層・古地震研究)や行谷ほか(2010活断層・古地震研究)は,貞観津波の波源モデルを提案した(Sawai et al. 2012 GRL).産総研による成果は,2011年の震災前に報告書が提出されていたが,それを生かした政府の長期評価が発表される前に,東北地方太平洋沖地震が発生した.
東北地方太平洋沖地震が発生した後,東北地方の沿岸域において,多くの研究者が津波堆積物の研究に取り組んだ.なかでも,イベント堆積物の記載や年代が不十分であった青森県および岩手県における調査により(例えば,Goto et al. 2015 Mar. Geol.; Ishimura and Miyauchi 2015 PEPS; Tanigawa et al. 2014 JQSなど),貞観地震を含めた古津波に関する地質学的証拠が充実することになった.また,西暦1454年享徳地震のように,それまであまり注目されていなかった海溝型地震も議論されるようになった(行谷・矢田2014地震;Sawai et al. 2015 GRL).
以上のように,東北地方太平洋沖地震の前後に行われた地質学的・歴史学的研究によって,日本海溝沿いにおける海溝型巨大地震の履歴について多くの情報が得られてきた.しかしながら,この地域における数千年規模での巨大地震の履歴の解明には多くの課題が残されている.例えば,貞観地震や享徳地震では南北にどの程度まで波源が伸張していたのかについて明らかにされていないし(Sawai et al. 2012, 2015),青森県の太平洋沿岸で見つかっている津波堆積物の起源も不明である(Tanigawa et al. 2014 JQS).こうした課題に取り組むためには,各地域における調査・分析の精度を上げるとともに,新しい技術を積極的に取り入れていく必要がある.
本発表は,Earth-Science Reviews誌に掲載された論文(Sawai 2020)に記載された内容の一部である.
貞観地震・津波の地質学的研究は,1990年代初頭の阿部ほか(1990地震)やMinoura and Nakaya (1991 J. Geol.)まで遡る.箕浦らの研究は,その後に菅原ほか(2001津波工学研究)に継承されていくが,津波堆積物の分布や地殻変動の証拠を広域で明らかにすることはできなかった.菅原らの研究と同時期に,産総研の研究グループは,石巻平野,仙台平野,福島県沿岸において群列サンプリングを行い,貞観津波による津波堆積物の平面的な広がりを示すとともに,福島県沿岸における地殻変動の証拠も示した(Sawai et al. 2012 GRL).これらの地質学的に証拠を基に,佐竹ほか(2008活断層・古地震研究)や行谷ほか(2010活断層・古地震研究)は,貞観津波の波源モデルを提案した(Sawai et al. 2012 GRL).産総研による成果は,2011年の震災前に報告書が提出されていたが,それを生かした政府の長期評価が発表される前に,東北地方太平洋沖地震が発生した.
東北地方太平洋沖地震が発生した後,東北地方の沿岸域において,多くの研究者が津波堆積物の研究に取り組んだ.なかでも,イベント堆積物の記載や年代が不十分であった青森県および岩手県における調査により(例えば,Goto et al. 2015 Mar. Geol.; Ishimura and Miyauchi 2015 PEPS; Tanigawa et al. 2014 JQSなど),貞観地震を含めた古津波に関する地質学的証拠が充実することになった.また,西暦1454年享徳地震のように,それまであまり注目されていなかった海溝型地震も議論されるようになった(行谷・矢田2014地震;Sawai et al. 2015 GRL).
以上のように,東北地方太平洋沖地震の前後に行われた地質学的・歴史学的研究によって,日本海溝沿いにおける海溝型巨大地震の履歴について多くの情報が得られてきた.しかしながら,この地域における数千年規模での巨大地震の履歴の解明には多くの課題が残されている.例えば,貞観地震や享徳地震では南北にどの程度まで波源が伸張していたのかについて明らかにされていないし(Sawai et al. 2012, 2015),青森県の太平洋沿岸で見つかっている津波堆積物の起源も不明である(Tanigawa et al. 2014 JQS).こうした課題に取り組むためには,各地域における調査・分析の精度を上げるとともに,新しい技術を積極的に取り入れていく必要がある.
本発表は,Earth-Science Reviews誌に掲載された論文(Sawai 2020)に記載された内容の一部である.