[M-IS15] 津波堆積物：東北地方太平洋沖地震後10年の成果と今後の展望

[MIS15-P01] 北海道えりも地域で確認された津波堆積物層に基づく千島海溝巨大津波の対比検討

*中西 諒¹、芦 寿一郎^1,2、宮入 陽介¹、横山 祐典^1,3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.東京大学大学院新領域創成科学研究科、3.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード：津波堆積物、千島海溝、放射性炭素年代測定、北海道、津波数値計算

数百年～数千年の再来間隔をもつ巨大地震の震源域の空間的多様性を明らかにするためには観測データだけでは不十分なため，地層中に保存された津波堆積物から情報を得る必要がある．千島海溝南部ではこれまで観測された地震では説明ができない巨大地震の存在が地質記録から明らかになっている(Sawai, 2020)．こうした巨大地震による津波は数百年の発生間隔を持ち，直近では17世紀に発生したとされている．しかしながら，これまで異なる地点間における砂層の年代対比を行った例は少なく，長い時間軸での破壊領域の時空間分布は明らかになっていない．本研究ではこれまで調査空白地であるえりも東海岸に焦点を当て，17世紀津波の規模やより古い時代のイベントについて対比可能性について検討した．千島海溝南端部に位置するえりも町において，過去4000年間に8–10層の砂層を見出し，海域からの供給および異常な分布から津波堆積物であると判断した．このうち17世紀のものは数値シミュレーションによって，北海道東部で広く確認される巨大津波を発生させた地震と同規模の破壊領域で説明可能であることが明らかになった．¹⁴C年代測定の結果，本地域の砂層の堆積年代は十勝沖セグメントに面する地域の3000BP以降の砂層とよく一致した年代値が得られた．えりも岬より西側の地域についても砂層の年代値が対応することから，日高南部で確認されたいくつかの砂層は千島海溝の巨大地震に由来する可能性が高い．