[M-IS15] 津波堆積物：東北地方太平洋沖地震後10年の成果と今後の展望

[MIS15-P04] 吉里吉里地域における古津波履歴の再検討

*石澤 尭史¹、横山 祐典²、宮入 陽介² (1.東北大学　災害科学国際研究所、2.東京大学　大気海洋研究所)

キーワード：津波堆積物、放射性炭素年代測定

津波堆積物は津波により運搬された再堆積物と定義される．同一の津波により形成された津波堆積物の分布範囲はその津波による浸水範囲を推定する根拠の一つであり，古津波復元の際に重要である．一般的に，津波堆積物の対比はその堆積年代から実施される．しかしながら，津波による侵食・再堆積の年代推定への影響や，年代測定試料の選定に伴う誤差から対比がうまくいかないことも多い．本研究で対象とする岩手県吉里吉里地域についても，先行研究から報告されている津波堆積物の年代が周囲の地域と差があり，年代の再検討が求められている．本研究では，複数の測定対象での¹⁴C年代測定結果から吉里吉里地域の津波堆積物の年代を再検討した．その結果，木材はその上位の堆積物の年代よりも有意に若い年代を示し，これは若い木の根が貫入したためと考えられる．またその木材周囲の堆積物の年代も上位の堆積物より若い年代を示すため，若い木材の貫入が木材周囲の堆積物の年代にも影響した可能性が考えられる．これらの検討から吉里吉里地域の古津波履歴を再検討し，その結果は周辺地域の古津波履歴と整合的であった．以上のような年代値の詳細な検討は古津波履歴を復元する上で極めて重要である．