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[MIS15-P06] 三重県南伊勢町の湖底堆積物に残された過去3000年間のイベント堆積物
キーワード:イベント堆積物、津波、台風、湖底堆積物、珪藻化石、南海トラフ
三重県南伊勢町に位置する沿岸湖沼のこがれ池おいて高潮・高波あるいは津波が起源と考えられる16枚のイベント堆積物が確認された.研究対象とした湖底堆積物試料は,フローター上からロシアンサンプラー等を使用して採取した.採取した試料は肉眼およびCT画像により観察を行い,16枚のイベント堆積物を検出した.これらのイベント堆積物のうち9枚では,肉眼観察により顕著な層相変化を認められなかったが,CT画像を用いることで有機質泥中の細かい粒度変化や堆積構造が確認された.各イベント堆積物の堆積年代を推定するため,放射性セシウム(Cs137)の測定と大型植物化石および花粉を測定物とした放射性炭素同位体年代測定を行った.得られた年代測定結果からベイズ統計を用いたAge-Depthモデル(Bchron;Haslett & Parnell, 2008)を作成した結果,16枚のイベント堆積物は過去約3000年間に形成されたことが明らかになった.こがれ池における過去3000年間における調査地の環境変遷を明らかにするため,湖の中心部で採取したコアについて珪藻化石群集分析を行った.その結果,最も上位のイベント堆積物E1の堆積する前までは,Tabellaria fenestrataやStaurosira spp.といった淡水種の割合が継続して高かった.一方で,E1の堆積後には,Amphora coffeiformis,Bacillaria paxillifer,Navicula gregariaといった汽水種の割合が高くなっていた.
沿岸湖沼に残されたイベント堆積物は,津波,高潮・高波,洪水といった突発的な自然現象により形成されたと考えられる.しかしながら,こがれ池には大規模な河川の流入はないため,本研究で見つかったイベント堆積物は津波または高潮・高波といった海水の浸水により堆積したと推定される.E1に関しては,放射性セシウムが検出されはじめる層準よりも上位に位置していることから,1959年に発生した伊勢湾台風による高潮堆積物である可能性が高い.この場合,珪藻分析から明らかになったE1の堆積前後の環境変化は,砂州の一部が決壊し湖に海水が流入しやすくなったことが原因であると考えられる.一方で,歴史記録の調査から南海トラフ沿岸地域は繰り返し地震と津波の被害を受けていることが明らかになっている.例えば,1707年宝永地震,1854年安政東海地震,1944年昭和東南海地震については,南伊勢町においても実際に津波による浸水があったことが確認されている(例えば,中田,1991;行谷・都司,2005).従って,こがれ池で見つかったイベント堆積物の一部は過去に南海トラフで発生した地震による津波堆積物の可能性もある.本研究は,文部科学省の南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトにおける津波履歴調査の一環として実施した.
沿岸湖沼に残されたイベント堆積物は,津波,高潮・高波,洪水といった突発的な自然現象により形成されたと考えられる.しかしながら,こがれ池には大規模な河川の流入はないため,本研究で見つかったイベント堆積物は津波または高潮・高波といった海水の浸水により堆積したと推定される.E1に関しては,放射性セシウムが検出されはじめる層準よりも上位に位置していることから,1959年に発生した伊勢湾台風による高潮堆積物である可能性が高い.この場合,珪藻分析から明らかになったE1の堆積前後の環境変化は,砂州の一部が決壊し湖に海水が流入しやすくなったことが原因であると考えられる.一方で,歴史記録の調査から南海トラフ沿岸地域は繰り返し地震と津波の被害を受けていることが明らかになっている.例えば,1707年宝永地震,1854年安政東海地震,1944年昭和東南海地震については,南伊勢町においても実際に津波による浸水があったことが確認されている(例えば,中田,1991;行谷・都司,2005).従って,こがれ池で見つかったイベント堆積物の一部は過去に南海トラフで発生した地震による津波堆積物の可能性もある.本研究は,文部科学省の南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトにおける津波履歴調査の一環として実施した.