日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 古気候・古海洋変動

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.23

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[MIS16-P12] 浦ノ内湾から採取された海洋コア堆積物の特徴と年代およびイベント堆積物について

*村山 雅史1,3、谷川 亘2、井尻 暁2、星野 辰彦2、廣瀬 丈洋2、捫垣 勝哉3、新井 和乃3、浦本 豪一郎3、近藤 康生4、尾嵜 大真5、米田 穣5 (1.高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科、2.国立開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 高知コア研究所、3.高知大学海洋コア総合研究センター、4.高知大学理工学部、5.東京大学総合研究博物館)

キーワード:浦ノ内湾、海洋コア、イベント堆積物、14C年代

内湾域は,地球システムの中で生態系における生物生産性が最も高い地域として認識され,主要な炭素固定の場であり,気候変動などの自然にともなう変化や人間活動における環境負荷にも敏感に反応する場所でもある。人間活動が盛んになった,「人新世」と呼ばれる産業革命以来,特に1950年以降は沿岸や内湾の海洋環境が著しく変化した。これまで国内では,海底堆積物をもちいた近過去数年から百年程度の湾内環境復元の研究例は多くある。しかし,「人新世」以前とそれ以後の人的な影響があった時代と,連続する環境履歴を高解像度で詳細に復元した例は極めて少なく,物質循環と環境変動メカニズムの関わり,生物相の変化については十分理解されていない。高知県浦ノ内湾奥(水深10m)から採取した堆積物コア(4M)の解析から,人新世を挟む海洋環境の変化や生物相の変遷履歴を復元することを目的としているが、本発表では、堆積物の物性や堆積年代やイベント堆積物について報告する。高知県土佐湾の中央部に位置する浦ノ内湾は,横浪半島の北側に面し,東西に細長く,12kmも湾入する沈降性の湾として知られ,潮汐で海水面が1〜2M変動する。高知大学調査船「ねぷちゅーん」を用いて、バイブロコアリングによって湾奥の水深10M地点で、堆積物コア(4m)が採取された。採取地点は,周囲からの河川の影響はないため,本コア試料は,湾内の詳細な環境変動を記録していると考えられる。採取されたコア試料は,X線CT撮影,MSCL解析後,半割をおこない肉眼記載や頻出する貝の採取と同定ほかをおこなった。堆積物の岩相は,olive からgray色のsity clayであり,全体的に多くの貝殻片を含む。コア上部付近は,黒っぽい色を呈し強い硫化水素臭がする堆積物であった。また,コア下部(コアトップより306m付近)に数mmオーダーの葉理の良く発達した8cmの層厚をもつ堆積層が認められた。この堆積層は、近くの水深8Mで採取された堆積物コアでも同様の層準で確認されたが、葉理は発達していなかった。堆積物の8層準から産出した貝殻片の放射性炭素年代(AMS 14C age)測定をおこなった。コア最下部で、約3800年前を示し、見積もられた平均堆積速度は102cm/kyr.であった。本発表表では、それらの結果について紹介する。