日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 古気候・古海洋変動

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.23

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[MIS16-P24] 白亜紀中期における南半球高緯度地域の古環境変動

*小宮 啓路1、長谷川 卓1 (1.金沢大学)

白亜紀は、現在と比較して海水準、平均気温、二酸化炭素濃度が高いことから温暖な気候であったことがわかっており、海洋地殻生成量も大きく、火山活動が活発であったとも考えられている。その中でも白亜紀中期にあたるセノマニアン期(100.5-93.9 Ma)は、それらの特徴が強くでており非常に温暖な気候であったことがわかっている。

白亜紀中期の古環境についての研究は、主にヨーロッパや北アメリカで進んでおり、同位体比イベントとして認識可能な海洋無酸素事変(OAE)による全球的な環境変動や、ミランコビッチサイクルの放射強制力による周期的な環境変動が確認されている。それに対し、南半球高緯度域ではまだ研究報告例が少ない。高緯度域は温暖化などの環境変化に敏感であることが知られているが、上記のような環境変動がみられるのか。みられるなら、どのように記録されているか、規模や周期性は解読できるのか。それを知るために、本研究では白亜紀の典型的な環境が発達したセノマニアン期の南半球高緯度地域の試料を分析し、無氷床・温室地球であった白亜紀の高緯度地域の環境変動を理解することを目的とした。

本研究では生層序から中期セノマニアン期と推定されているIODP Exp,369 U1516C 34R・35Rのコア試料を用いて有機炭素同位体比(δ¹³Corg)や全有機炭素(TOC)、全窒素(TN)、C/N比の高解像度分析を行った。バイオマーカー分析については、表層生産と連動しそうなアルケノンなどの分子に注目して、5試料について解析を行った。これらの分析から以下のことが明らかになった。

(1) 先行研究で得られたδ¹⁸O変動から議論された約4℃に及ぶ海洋表層水温の変動と、本研究データから得られたTOCおよびδ¹³Corg変動で評価される陸域および海底の環境変動についての変動とその周期性を比較したところ、それらは連動せず、それぞれ異なる要因によって引き起こされている。

(2) δ¹³Corgの変動は、一般的に知られるような有機物の由来(陸上植物と海洋プランクトンの混合比率)に支配されているのではなく、有機物の保存の程度(海底の酸化還元状態)に関連していると解釈できる。

(3) ハプト藻類に由来するC₃₇アルケノンの2不飽和が検出され、3不飽和が検出されないことから、堆積当時の表層水温は高緯度域でありながら、現在の赤道付近の水温(28℃以上)よりも高い可能性がある。また、C₄₀アルケノンについてはδ¹⁸Oと負の相関関係をもつことから、水温指標としてのポテンシャルをもつと考えられる。