日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 地球掘削科学

2021年6月4日(金) 13:45 〜 15:15 Ch.19 (Zoom会場19)

コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、座長:諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)

15:00 〜 15:15

[MIS18-12] ICDP 南アフリカ金鉱山地震発生場掘削(DSeis)計画:2020年の活動の概観

★招待講演

*小笠原 宏1、ICDP DSeis Team (1.立命館大学理工学部)

キーワード:地震発生場、ICDP科学掘削、南アフリカ大深度金鉱山、下部地殻並に高密度な変質貫入岩体

ICDP DSeis計画は、南アフリカの大深度金鉱山から、至近距離の地震発生場を掘削調査することに成功している。本発表では、これに関わる2020年度の研究成果を概観する。

採掘レベルにおいては、Naoi et al. (2013 Pageoph, 2015 JGR, Tectonophysicsなど)が、採掘前線前方に、準静的な微小破壊域の成長を詳細に描き出した。成長した数十mサイズの微小破壊帯の母岩と破砕物と破砕構造が、BQ 1.5m長トリプルチューブによって、ほとんどそのままの状態で回収された。京大堤研における摩擦実験結果に基づき、ガウジとRock-to-Rockの摩擦特性の比較した成果がMngadi et al. (2021 Int. J. Rock Mech. Min. Sci.)に出版された。

2014年M5.5オークニー地震の余震発生帯上縁部付近については、地下2.9 kmからNQフル・コア掘削を行い、総延長1.6 kmのコアの回収に2017~2018年に成功している(Ogasawara et al. Deep Mining 2019;ICDP 2019 The Thrill to Drill)。2020年度は、孔内検層、高知コアセンターでのコアロギングと回収コアの統合整理(吉田 2021立命館修士論文; Ogasawara et al. 2021 JpGU)、稠密測定応力の統合解析(東 2021立命館修士論文)、余震DD再決定(田所2021立命館修士論文)、反射法探査データの統合解析(鈴木・他 2020地震学会;2020 AGU)が進んだ。上部地殻並の密度と弾性波速度を持つ地震発生場の母岩は、変質したmaficな貫入岩(密度と速度は下部地殻並)の影響を大きく受け、余震の筋上分布も規定してていることがより明かになり始めた。

米国とドイツなどの微生物学者チームは、Dolerite Sillと別のmaficなダイクの交差部において、非天水起源で塩分がほとんど飽和し、非生物起源の溶存有機炭化水素に富む湧水やガス(海嶺の熱水噴出孔付近に類似?)も見つけており(Wiersberg et al. 2019 EGU; Rusley et al. 2018 AGU; Nisson et al. 2019 AGU)、同位体分析も進んだ(Warr et al. 2020 AGU)。 

ICDPチームは、日本・南ア・アメリカ・ドイツ・スイス・インド・イスラエル・オーストラリアの研究者と南アの鉱山産業界の実務者から構成されており、最近の活動コアメンバーは、矢部康男・伊藤高敏(東北大)、船戸明雄(深田地質研究所)、J. Mori (京都大)、廣野哲朗(大阪大)、山本祐二(高知大)、B. Liebenberg (Moab Khotsong鉱山)、T.C. Onsott(Princton大)、T.L. Kieft(New Mexico Tech)、T. Wiersberg M. Zimmer (GFZ)、R.J. Durrheim(Wits大)、J. Castillo (Free State 大), M. Ziegler (ETH, Zurich)らと彼らの学生達である。

本掘削計画は、SATREPSや科研費の成果を発展させたものであり、ICDP、JSPS Core-to-Core Program, JSPS-SA NRF bilateral Program, 立命館大学、災害を軽減するための地震火山観測研究計画、高知コアセンター共同利用、米国NSF、ドイツDFG、南アNRF, CSIR, CGSなどのサポートを受けている。