日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 地球掘削科学

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.19 (Zoom会場19)

コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、座長:藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)

16:00 〜 16:15

[MIS18-15] 海洋プレートの加水を理解するための掘削計画:東北沖の沈み込む海洋プレート屈曲域の正断層掘削と幌満カンラン岩体掘削

★招待講演

*森下 知晃1 (1.金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)

キーワード:海洋プレートの加水、プレート屈曲断層掘削、海洋プレートでかんらん岩に水が触れ始めた時に何が起きるか

地球表層の水収支には海洋プレートの形成と消滅に伴う水循環が重要な役割を担っていると考えられている.海洋プレートが形成時,形成後にどこにどこまで水が浸透し,どのように海洋プレートを改変させているのかを明らかにしたい.さらに,生命が存在する地球では,海水の浸透によって生物圏が広がっている可能性がある.海洋プレートが大規模に加水し,プレートの物性を改変させる場として海洋プレートが沈み込む直前のプレート屈曲域(アウターライズ)から海溝までの領域が注目されている(例えば,Fujie et al., Nature Communications, 2018).この領域では,海洋プレートの屈曲に伴う正断層に沿ってマントル深度まで海水が浸透し,大規模な蛇紋岩化などが起きていることが示唆される(Ranero et al., Nature, 2003). しかしながら,この断層の規模・状態は不明で,断層に沿ってマントル深度まで水が浸透し,マントルを改変させているかどうかは自明ではない.また,プレート屈曲域で海洋プレートの改変が起きているとするならば,それ以前の海洋プレートにおいてマントル深度までの加水・変質についての理解が必要である.さらに,海洋プレートのマントルを構成するカンラン岩に水が浸透を開始し,どのように蛇紋岩化が進行するのか,蛇紋岩化に伴う水組成変化,微生物の存在・影響などの理解が求められる.そこで本発表では,東北沖でのプレート屈曲域での正断層掘削案(通称H-ODIN)およびカンラン岩の蛇紋岩化初期の現象を理解するために新たに世界的に見ても蛇紋岩化をほとんど受けていない新鮮なカンラン岩類が広く分布する幌満カンラン岩体の掘削案について検討を始めたのでこれらの掘削提案の科学的目標・戦略・必要性について紹介したい.また,これらの科学掘削計画を進める上で,多くの分野の方々との共同研究として進めていく大変さとその先にある魅力も紹介する.