日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 地球掘削科学

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.19 (Zoom会場19)

コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、座長:藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)

16:30 〜 16:45

[MIS18-17] 大阪平野下基盤における原位置地殻応力-深層地殻活動観測井におけるコア変形法による応力値測定-

*小村 健太朗1、船戸 明雄2、伊藤 高敏3 (1.防災科学技術研究所、2.深田地質研究所、3.東北大学流体科学研究所)

キーワード:コア変形法、原位置地殻応力、岩石コア、大阪平野、ボアホールテレビュア、ブレイクアウト

地震発生過程やテクトニック変動を理解する上で,重要な物理量である地殻の原位置の絶対応力に関するデータは,陸域においても,数少ない状況にある.主要な原位置地殻応力測定手法では,掘削と特殊な孔内計測が必要で,多点での測定が難しいという要因がある.本発表では,一例として,防災科学技術研究所の,大阪平野にある深層地殻活動観測井における原位置地殻応力測定の結果を報告する.本観測井では,ボアホールテレビュア検層から,ボアホールブレイクアウトが観察され,すでに応力方位が推定されているが(小村,地震学会秋季大会2020),さらに,コア変形法(DCDA法, Diametrical Core Deformation Analysis法)を適用して応力値を推定した.コア変形法では,掘削孔内で特殊な計測をする必要がなく,採取された岩石コアの,地下からの応力解放による弾性変形を計測し,岩石の弾性定数を掛け合わせて応力値を推定する.先行研究により,深部岩石コアでは,採取後の弾性変形が大きく,コア変形法の適用できることが示されている.
大阪府の此花観測井(北緯34°39'45.92",東経135°23'22.53",掘削深度約2033m)の基盤に達する深度2035.5mコアと田尻観測井(北緯34°23'52.14",東経135°17'01.24",掘削深度約1532m)の同じく基盤となる深度1202.4mおよび1494.8mコアにおいて,Funato and Ito (2017, IJRMMS)で設計され,防災科研に整備された装置でコア外周にそった直径を測定した.測定された岩石コアは,採取後,10年以上経過したものではあるが,外周にそって直径がサインカーブ状に変化し,岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることが示され,コア変形法の適用可能と判断した.応力値を求めるのに,同じ掘削井で実施されたPS検層による地盤のP波速度,S波速度から,密度を仮定して計算される弾性定数を適用したところ,~60 MPaの差応力値となった.今後,室内岩石試験により,直接岩石コアの弾性定数を計測していく予定である.
観測井などの孔井掘削と岩石コア採取する機会に,あわせてボアホールテレビュア検層実施することにより,条件が適合して,ボアホールブレイクアウトが形成されれば,原位置地殻応力を値と方位ともに求めることができることが示された.