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[MIS18-P05] モルジブ海底堆積物のPb同位体比変動に基づく新第三紀における南アジアモンスーンの発達史 (IODP Exp. 359)
キーワード:南アジアモンスーン、鉛同位体比、炭酸塩堆積物
アジアモンスーンは現在アジア域の多くの人々の生活に影響を及ぼしているが、特にインド周辺に影響を及ぼす南アジアモンスーン(SAM)の発達史についてはまだ解明されていない点が多い。これまでにインド洋に位置するモルジブの海底堆積物の研究より、風-海流系の影響で堆積するドリフト堆積物の存在から、13 Ma頃からSAMが強化したことが示唆されている。本研究では、IODP Exp. 359より採取されたモルジブ海底堆積物中の鉛(Pb)同位体比の変動を調べることで、SAMの風-海流系の発達史の理解を目指した。特に本研究では主に海洋と陸域の環境情報をそれぞれ有する炭酸塩成分と非炭酸塩成分に分けて分析することでより詳細な環境復元を試みた。分析の結果、特に炭酸塩成分については13 Ma頃をピークとして高い206Pb/204Pb比(22-24)が見られ、これまでに全球的に報告されているどのPb同位体比よりもかなり高い値を示した。しかし近年カナダ楯状地の始生代の炭酸塩試料から高い206Pb/204Pbが報告されており、本研究地域では南インドのダルワールクラトンが起源の候補と考えられる。つまり、13 Ma以降、急激にモンスーン海流が発達し、高い鉛同位体比起源の炭酸塩成分がインド西南沖からモルジブ周辺海域に運ばれたことが推察される。しかしこのピークは13 Ma以降は見られないため、SAMの発達の過程で一時的にモンスーン海流が強まった、あるいはモンスーンによる降雨が強まり化学風化が促進されたなどの可能性が示唆される。