日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 海底〜海⾯を貫通する海域観測データの統合解析

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.21

コンビーナ:有吉 慶介(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、高橋 成実(防災科学技術研究所)、木戸 元之(東北大学 災害科学国際研究所)、稲津 大祐(東京海洋大学)

17:15 〜 18:30

[MIS19-P04] 様々な観測形態によるGNSS-音響方式での上下動検出について

*木戸 元之1、本荘 千枝2、木村 友季保2 (1.東北大学 災害科学国際研究所、2.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:GNSS音響、海底上下変動、海中音速

GNSS-音響方式(GNSS-A)の海底地殻変動観測において、上下変位と海中音速変化は緩いトレードオフの関係にあるため、分離が比較的困難であった。しかし、このトレードオフを解消する様々な観測形態が考案され実用化されてきた。本発表では、各種の観測形態を整理し、実測と数値シミュレーションによる精度の評価、さらにGNSS-A観測データの海洋物理学への寄与について論じる。

GNSS-A観測は米国Scripps海洋研究所で最初に考案された際(Spiess, 1985)、正三角形状に水深と同程度の広がりを持って配置した海底局アレイの中心直上での定点観測による水平変位の検出想定していた。これは、海中の音速構造が水平成層構造をなす限り、中心での定点保持を半径約10 m以内保っていれば、推定される水平位置に音速の時間変化が影響することが無く、しかも、個々の海底局の位置はメートルオーダーの精度で把握していれば良いという、極めてシンプルな定式化で実用精度を得る巧妙な手法であった。実際に上下動より水平動が卓越するテクトニックな現象は多く、この手法で彼らは多くの成果を挙げた。海上プラットフォームに曳航ブイを用いていた東北大学では、定点保持精度が~200 mとならざるを得なかったが、音速の時間変化をNTD (Nadir Total Delay) と呼んでいる鉛直規格化遅延量で表現することにより、定点保持の制限を撤廃した(Kido et al., 2006)。一方、海上保安庁と名古屋大学は、移動観測により個々の海底局の3次元位置を推定することで上下動も推定していたが(Fujita et al., 2006; Ikuta et al., 2008)、当初は水平動ほどの精度はなかった。

その後、移動観測でのキャンペーン一括解析などにより、GNSS-Aによる上下動の検出が実用精度に達した。一方、定点観測においては、原理的に上下動と音速変化の分離は不可能であるが、大小の三角形アレイを組み合わせた6局サイトで上下動の検出に成功している(Honsho et al. 2017)。これは、6局サイトであれば、定点観測においても上下動と音速変化を分離するための音響測距の射出角のバリエーションが得られるためである。最近、東北大では三角形アレイの中心に1局追加する4局アレイの運用を開始した。この場合6局サイトよりも低コストで定点観測時の上下動検出が原理的には可能である。予備的な移動観測・定点観測を組み合わせた観測では、中心の1局がない場合と比べ、上下動検出精度が倍程度に向上することが確認できた。また、Dilution of Precision(DOP)を指標をしたシミュレーション評価でも中心1局の効果が示され、Tomita et al. (2019) の数値シミュレーションによる評価と調和的である。

さらに、これらの解析を通して、UNESCOの式として知られる音速計算式の問題点、音速構造の水平勾配の存在、平均音速の時間変化などの定量的な値が得られているので、紹介する。