日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] ジオパーク

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.16 (Zoom会場16)

コンビーナ:有馬 貴之(横浜市立大学)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)、尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、有馬 貴之(横浜市立大学)

09:45 〜 10:00

[MIS22-04] ジオツーリズムの対象としての水中火山岩-NHK ブラタモリやジオパークと関連して

*山岸 宏光1、松田 義章1、志村 一夫2 (1.特定非営利活動法人北海道総合地質学研究センター、2.(株)シン技術コンサル)

キーワード:水中火山岩、枕状溶岩、水冷破砕岩、ジオパーク、NHKブラタモリ、室蘭絵鞆半島

最近では、水中火山の一部を占める「ハイアロクラスタイト(水冷破砕岩)」という地学用語がNHKブラタモリに何度か登場したり、ジオパークなどでは、伊豆半島や山陰ジオパークなどでも紹介され、今年の大学入学共通テスト「基礎地学」でも枕状溶岩が出題されるなど水中溶岩は一般化しつつある用語となっている。一方、1996年2月に北海道積丹半島の豊浜トンネルの崩落事故はまさにこの水冷破砕岩で発生したものであり、今日、道路やトンネルなど土木工事現場でも、その物性や陸上噴火との違いが反映して、重要な課題の一つである。
 1970-1980年代は、"黒鉱"の開発の盛んな時期で、グリーンタフ研究や海底火山活動の議論や研究が盛んであった。しかし、その後はわが国の鉱山資源開発が衰退してしまい、こうした調査研究は衰退した。しかし、一方で、述べたように道路建設、トンネルダムなどの応用地質分野においては、重要な課題の一つとなりつつある。例えば、岩盤分類の課題では、従来は機械的に分類が行われてきたが、火山岩、とくに海底で噴出・噴火した火山岩は、多様な噴火形態・堆積様式を示し、陸上火山と同様に不均質な岩体を形成するため、その分類も機械的に扱うのは難しい。さらに、水中火山岩は、空中で噴火・堆積したものとは、透水性・変質・風化過程などに違いが物性に反映している。また、水中火山岩や水中火砕岩は海岸によく露出していて、奇岩や断崖絶壁を形成する事が多く、景勝地となっている場合が多い。最近では、ジオパークなど(Fig.1)では、枕状溶岩が多く見学地の対象になっている。つまり、下北半島男鹿半島、三陸、佐渡、糸魚川、下仁田、島根半島・宍道湖中海、西予、室戸海岸などで取り上げられている。一方、水冷破砕岩(水冷破砕溶岩)は、伊豆半島、山陰、 島根半島・宍道湖中海ジオパークなどで紹介されているが、少ない傾向がある。また、NHKのブラタモリなどでは、熱海、知床半島、室蘭で”水冷破砕溶岩”や “水冷破砕岩”として紹介され、景観資源の一つとしても注目され始めている。
 一方、地質学研究の分野でも、天野一男氏が「グリーンタフ ルネサンス」を提唱して、先に述べたように1970代で終わってしまった研究を新第三紀テクトニクスとして再評価しようという動きもある。また、日本特有の資源開発の分野においては、現在の海底熱水噴出口の形成・分布環境が、「黒鉱(VMS:火山性塊状硫化物鉱床)と類似している事から、地質時代の水中火山噴出物の膨大な知識が重要視されている。さらに、ドローンが出現して海岸ベンチの露頭の詳細で正確なマップ作成が可能になり、海底探査やデジタル観測技術も進み、現世の海底下で火山活動の研究も急速に発展しつつある。日本列島の骨格は10Ma以降に水中火山活動で形成されたことから、わが国の3分の2はこうした海底火山のベースの上に形成されたといえる。  
 本講演では、 とくに景観資源的側面から、ジオツーリズムの対象となる水中火山を構成する水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)などの用語の経緯を解説し、珪質な水中火山岩の諸形態からなる室蘭絵鞆半島(Fig.1)で実施した空中やクルージングによるジオツアーを報告する。