日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] ジオパーク

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.16 (Zoom会場16)

コンビーナ:有馬 貴之(横浜市立大学)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)、尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、有馬 貴之(横浜市立大学)

10:00 〜 10:15

[MIS22-05] 社会地理学的観点からみたジオパークにおける防災への取り組み:レジリエンスに果たすソーシャル・キャピタルの役割に着目して

*中村 昭史1 (1.室戸ジオパーク推進協議会)

キーワード:防災、レジリエンス、ソーシャル・キャピタル、島嶼

自然災害に対する防災への取り組みは、近年各地のジオパークで活発化している。室戸ジオパークでも、南海トラフ地震を想定した防潮堤、避難タワーや津波シェルター、避難誘導路などハード面での整備は進んでいる。一方で、防災・減災とともに、被災後の復旧復興までを視野に入れるならば、地域のレジリエンスをトータルで高めることが必要である。本発表では、社会地理学的観点からジオパークにおける防災への取り組みについて考える。Shaw and Sharma(2011)は、地域を脅かすリスクとして、自然災害や伝染病、紛争、テロのように「急に発生し、目に見えるダメージをもたらす突発的で強力な事象」を指すShocksと、貧困や公衆衛生、海面上昇など「ゆっくりと発生し、目に見えにくいが確実にダメージを蓄積させる慢性的な事象」を指すStressesの2つに分類している。室戸においても地震や津波、台風など自然災害を念頭に置いたShocksへの関心は高いが、人口減少や少子高齢化、経済格差、インフラの老朽化などの慢性的なStressesへの関心は低い。もしくはそれ自体が問題であるとの認識はあっても、地域のレジリエンスを脆弱化させる要因であるとの理解は進んでいない。さて、地域のレジリエンスを扱った社会科学研究では、シカゴの熱波やハリケーン・カトリーナ、東日本大震災などShocks時の被害を軽減し、Shocks後の復旧復興を促進する資源として、ソーシャル・キャピタル(以下SC)への着目が進んでいる。加えて、SCは、日常的な生活の中で築かれる社会的ネットワークや互酬性や信頼であり、日常的・慢性的なStressesへの対応としても期待されるものである。本発表では、ジオパークではないが、SCを維持し高める地域活動を行っている種子島の集落を事例として取り上げる。また、島嶼という地域条件から地域内のSCにどのような特徴が見られるのか調査表調査の結果から考察する。ジオパークとして自然科学的な視点に加え、社会科学的な視点も踏まえた体系的な防災への取り組みを示すことは、一つの重要な課題であると考える。