日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 山の科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.20

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学山の環境研究センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)

17:15 〜 18:30

[MIS23-P03] 松本盆地西部に分布するチャート岩塊

*上山 瑛梨佳1、吉田 孝紀2 (1.信州大学、2.信州大学理学部理学科地球学コース)

キーワード:斜面崩壊、美濃帯付加コンプレックス、重力流

長野県松本盆地西部の梓川沿いには,複数の長径数メートル以上の巨岩塊が分布している.このうち,松本盆地西部の梓川倭には火打岩と呼ばれる径約7メートルの岩塊が,松本市波田には三ツ岩と呼ばれる径約8メートルのチャート岩塊が定置している (原山ほか, 2009) . これらの岩塊について, 基盤岩の一部が地表に表れているのか, または運搬された転石であるのか議論が続いている.
本研究ではこれらの岩塊について,基盤岩の露出や転石の可能性を踏まえ起源を推定するため,薄片を用いた内部構造の観察と二次的に生成された鉱物について検討した.
チャート岩塊から試料を採取して作成した薄片の観察から,どちらもの岩塊も熱変成作用を受けていることがわかった.特に,火打岩では放散虫仮像の長径が大きく,小型の放散虫仮像が消失していた.また,EDS分析の結果,火打岩ではカリ長石が脈部に含まれていることが判明した.以上のことから,火打岩は三ツ岩より高温の変質を受けたと考えられる.
さらに,チャート岩塊との比較のために、梓川上流において礫サイズのチャート転石を採取した.鏡下観察の結果,これらのチャート転石には,変質鉱物として黒雲母,方解石や,チタン酸化物が認められた.このことから,これらのチャートの転石は強い熱変成作用を受けているといえる。
周辺の地質を考慮すると,チャート転石に熱変成作用を与えたと考えられる岩体は梓川上流に位置する奈川花崗岩体であると考えられる.二つの岩塊についても,この花崗岩体が影響を与えたと考えられるが,三ツ岩より花崗岩から遠い地点に位置する火打岩が, 高い変成度を示すことは矛盾する. このことから, どちらも異地性の岩塊である可能性, あるいは,一方が異地性の岩塊である可能性が挙げられる. いずれの場合でも、近い過去において大規模な斜面崩壊や重力流が生じ、岩塊が運ばれたと考えられる。

引用文献
原山 智・大塚 勉・酒井潤一・小坂共栄・駒澤正夫, 2009, 松本地域の地質 地域地質研究報告.  5万分の一地質図幅 金沢 (10) , 第46号NJ-53-6-3, 独立行政法人, 産業技術総合研究所, 地質調査総合センター.