日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 山の科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.20

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学山の環境研究センター)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)

17:15 〜 18:30

[MIS23-P04] 最終氷期以降の諏訪盆地周辺の風化環境

*川野 律歩1、葉田野 希2、吉田 孝紀1 (1.信州大学理学部理学科地球学コース、2.長野県環境保全研究所)

キーワード:化学組成分析、化学的風化、古環境復元

諏訪湖においての古環境復元は,安間ほか(1990),大嶋ほか(1997)によって行われてきた.それらの研究では,珪藻化石群集と花粉化石群集を使用して植生変遷や堆積環境が推定されている.一方で,堆積物の化学組成には風化前と後の組成が反映され,風化や供給源の推定が可能性である.よって本研究では諏訪湖南岸で掘削されたボーリングコアの化学分析を用いて,風化と起源についての検討を行った.

本研究で行ったボーリングコアでは深度30mの堆積物を採取できたが,上部5mは人工物であった.掘削されたコアの岩相は,堆積場が河川チャネル・氾濫原から湖底,再び河川チャネルと変化していることを示し,最下部は14C年代法から約22000年前と推定される.岩相変化からunit1(22627年前~13800年前),unit2(13800~11700年前),unit3(11700年前~10500年前),unit4(10500年前~6000年前),unit5(6000年前~現在)の5つのunitが認識された.採取された110試料のXRFを用いた化学分析,XRDを用いた粘土鉱物の同定を行った.また,諏訪湖の流入河川の河床から採取された堆積物の鉱物カウントを行った.

流入河川の堆積物はほとんど風化した火山岩片で占められていた.XRDの結果,unit3を除き,X線回折線の強度は低く,非晶質の物質が卓越している.これらのことから,unit3を除き,諏訪湖の堆積物は集水域の表層の土壌に由来したと考えられ,現在火山岩片をより多く供給する上川に主に起源をもつと推測される.XRF分析の結果を,A-CN-K図とA-CNK-FM図(Nesbitt and Young, 1982)を用いて解釈すると,unit4は他unitよりも苦鉄質な供給源を持つと言える.さらに,unit3は化学的風化指標であるCIA値(Nesbitt and Young, 1982)が高かったこと,カオリナイトが認められたことから,供給源がより珪長質な岩石であったことが推測される.また,上下の層準で類似したX線回折線が得られなかったこと,明かな色調の違いから,11700年前~10500年前での一時的な気候変動や供給源変化が推測される.

引用文献
安間恵・長岡正利・丹羽俊二・関本勝久・吉川昌伸・藤根久, 1990, 諏訪湖湖底の構造調査と環境地質, 地質学論集, 36, 179-194.
Nesbitte, H. W. and Young, G. M., 1982, Early Proterozoic climates and plate motions inferred from major element chemistry of lutites, Nature Vol.299, 715-717.
大嶋秀明・徳永重元・下川浩一・水野清秀・山崎晴雄, 1997, 長野県諏訪湖湖底堆積物の花粉化石群集とその対比, 第四紀研究 36(3), 165-182.