日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.18

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、相木 秀則(名古屋大学)

17:15 〜 18:30

[MIS24-P01] 東西磁場が印加された回転球面上の 2 次元理想磁気流体波動とアルフべン連続モード

*中島 涼輔1、吉田 茂生2 (1.九州大学 大学院理学研究院、2.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:MHD波動、臨界緯度、磁場の空間勾配、アルフべン連続モード、回転流体

大きさが余緯度θに依存する東西磁場が印加された回転球面上の 2 次元理想磁気流体 (MHD) の線形波動を調べた. 背景磁場が B = B0 sinθで表される場合 (ここで, B0 は定数, Φ は方位角) は, 西に伝播する速い磁気ロスビー波と東に伝播する遅い磁気ロスビー波の 2 種類が存在することが分かっている. この背景磁場分布以外の場合では, 固有モードの東西位相速度が局所的なアルフべン波速度 (を sinθで割ったもの) と一致するようなところに確定特異点をもつ線形波動の微分方程式を解かなければならない. 臨界緯度の位置は考える固有モードの東西位相速度に依存するため, このことは, 球面上という閉じた領域であるにもかかわらず, アルフべン波の共鳴によって連続モードが生じるということを意味している. 類似の状況には, 非粘性平行シアー流の線形問題があり, これは位相速度と局所的な平均流速が一致するところで臨界層を生じうる (例えば, Case, 1960).

我々は背景磁場が B = B0 sinθcosθ の場合について数値的に固有値問題を解き, 連続モードが確かに存在することを確かめた. 連続モードの固有周波数は分散関係のグラフ上を面的に広がってしまうため, 離散モードのブランチが連続スペクトルに埋もれて見つかりにくくなっている可能性がある. それゆえ, 我々は各固有モードのエネルギー分配を計算することによって, 連続モードに埋もれた離散モードを拾い出すことを試みた. 注目すべきことは, 今回考えた背景磁場分布の場合には, 遅い磁気ロスビー波の離散的なブランチが見つからなかったことである. このことから理想磁気流体の場合には, 背景磁場分布の選択が, 遅い磁気ロスビー波の出現に影響を及ぼしてしまうことがわかった.

数値計算により, 連続固有モードの構造が求められ, それらが臨界緯度付近でフロベニウスの方法による 2 つの線形独立な解の重ね合わせになっていて, そこでの理論的な接続条件と整合的であることが示された. 印加した磁場の強度が小さいとき, 連続モードの固有関数は, 例外はあるものの, 西進の場合は極側で, 東進の場合は赤道側でエバネッセントになる傾向がある. この特徴は, ゆっくりと空間変化する磁場を伴う回転流体中の高波数の磁気流体波が, 臨界層へ近づいていくが, そこを超えられないという WKBJ 近似の帰結 (Acheson, 1972; Eltayeb & McKenzie, 1977) と整合的である. Acheson (1972) は, ある状況下で磁気流体波は臨界層を横切ることができるという「バルブ」効果を提案したが, 我々が考える問題では, 自転角速度の水平成分が 0 であるので, その効果が起こる条件の範囲外である.