日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.12 (Zoom会場12)

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、座長:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

14:45 〜 15:00

[MIS26-04] 日本海東縁酒田沖における表層型メタンハイドレート周辺の高分解能海底三次元画像マッピング

*浅田 美穂1、佐藤 幹夫1、棚橋 学1、横田 俊之1、後藤 秀作1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:表層型メタンハイドレート、音響マッピング、高分解能海底三次元画像マッピング

日本海東縁の酒田沖では、南東側を逆断層によって区切られ紡錘形を成す海丘(以後酒田海丘(仮称)と呼ぶ)頂部の海底下浅部に表層型メタンハイドレート(MH)の賦存が知られている(天満・後藤、2018)。酒田海丘では既に複数回にわたる観測航海が実施され、船舶およびAUVを用いた音響マッピング、ROVによる海底目視観察、海洋電磁探査、高分解能三次元地震探査、掘削同時検層(LWD)、サンプル採取等がされてきた(森田、2015;天満・後藤、2018;横田、2020)。AUVによる地形調査によると、本海丘は、長径約15km、短径約10 kmの北東-南西方向に細長い紡錘形を成し、逆断層により区切られる南東側の比高は約120mである。海丘頂部には、長径約1km×短径300〜400 mで深さ約12 mの、急斜面に縁取られた陥没地形が存在する。陥没地形の内側には南北二カ所のテラスと、陥没地形中央付近に単独の丘が、陥没地形の外側には緩やかな高まりがある。測深に用いた音響信号の後方散乱強度は、陥没地形を縁取る急斜面で最も大きく、陥没地形内テラスと陥没地形の外側(北東側、東側及び南西側)の高まりで比較的大きく、周辺へ向けて段階的に小さくなっている。

表層型MHの海洋産出試験実施海域検討と環境調査のために、2020年には新たに、第一開洋丸(海洋エンジニアリング(株))を用いた1K20航海にて、ROV-Kaiyo3000に搭載した高分解能三次元画像マッピングシステム「SeaXerocks 1」による海底面の観察を実施した。1K20航海でSeaXerocks 1は、海底から高度およそ4 mおよび速度1.5ノット程度を保つよう航行され、静止画像とレーザースキャニングによる海底の微細な地形変化を、高密度に取得した。静止画像は歪み補正と色調補正ののちに、レーザーが観測した微細な地形変化を表現する点群データに変換され、補正された位置情報と合成されて、3次元画像として出力された。3次元画像の解像度は2mm(測線直交方向)×数cm(測線方向)で、目視観察に相当する面的かつ詳細な情報が得られた。SeaXerocks 1では異なる測線間の画像をマージする機能がないために、観測測線が重複する場合でも独立した画像として表示される。1K20では生物や岩石の分布など海底状況の面的な拡がりを把握することを目指して、陥没地形とその周辺でSeaXerocks 1による観測を実施した。

本観測の限りでは海底面にMHが確認できない。陥没地形の中では海水が濁っていることが多く、ヒトデやイカなど大型生物も多い。陥没地形周縁内側斜面の一部と中央の丘で、特に生物量が多く、バイオマットや炭酸塩岩と思われる比較的大きな岩石片が観察される。陥没地形の底は柔らかく細粒の堆積物に覆われる。陥没地形内の南北にある二カ所のテラスと、陥没地形外側の高まりは広く堆積物に覆われているが、稀に岩石露頭と、小規模な点状の生物マットが確認される。現在の海底では、陥没地形周縁内側斜面と、陥没地形外側の高まりの一部に限定された浸み出しの場があり、局地的に小規模な生物群が見られるのみである。1K20による海底面状況の観察結果は、現在の海底面では活発ではない流体の浸み出しがあることを示唆する。

本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。

参考文献:
天満・後藤(2018)第33回メタンハイドレート開発実施検討会、資料7-2(経済産業省)
森田(2015)日本海表層型メタンハイドレート胚胎域における 2014 年度 AUV 詳細調査、日本地球惑星科学連合2015年大会、MIS24-02、講演要旨(5月27日、千葉)
横田(2020)高分解能三次元反射法地震探査の結果 、表層型メタンハイドレートの研究開発、2020年度一般成果報告会資料(産業技術総合研究所)