日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2021年6月6日(日) 15:30 〜 17:00 Ch.12 (Zoom会場12)

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、座長:八久保 晶弘(北見工業大学)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)

15:30 〜 15:45

[MIS26-06] 日本海北東部酒田海丘(仮称)のガスハイドレート胚胎域における表層堆積物中の地球化学プロセス

*太田 雄貴1、鈴村 昌弘1、塚崎 あゆみ1、鈴木 淳1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:メタン、日本海、嫌気性メタン酸化、微量元素

日本海北東部の酒田海丘(仮称)では、音響探査によって海底下の表層型メタンハイドレートの存在が見込まれている。2020年7月に実施された調査航海SS20-1でのROV観測によって、酒田海丘(仮称)のメタンハイドレート胚胎域において白色のバクテリアマットのような構造を持つ還元的な堆積物がパッチ状に存在することが確認された。本研究では、バクテリアマット構造を持つ還元性サイト、還元性サイトから数メートルのみ離れた酸化性サイト、メタンハイドレート胚胎域外のリファレンスサイトで、長さ約30cmのプッシュコア堆積物サンプルを採取した。これらの試料を用いて、間隙水の硫酸イオン濃度や堆積物の全有機炭素、全硫黄(TS)、微量元素含有量および無機炭素の炭素安定同位体比(δ13C)を明らかにし、酒田海丘(仮称)のメタン湧水に関連する化学プロセスを議論した。還元性サイトのコア試料では、コア表層(0–6cm)は暗黒色で硫化水素臭が強く、6 cm以深の堆積物は暗灰色のシルトで構成されていた。酸化性サイトから採取したコア試料の上部堆積物(0–10 cm)は灰色で、10 cm以深は暗灰色の堆積物であった。リファレンスサイトのコア試料はほとんどが灰色の堆積物であった。還元性サイトでの間隙水硫酸イオンプロファイルは、堆積物-水界面付近の海水の値から、およそ10 cmbsfで濃度0になるまで直線的に減少していた。また、還元的サイトのコア全体および酸化的サイトの深度10 cm以深の堆積物では、全硫黄含有量(TS)がリファレンスサイトに比べて顕著に高く、また全無機炭素のδ13Cは大きく負の値(–20‰から–40‰)を示した。これらの堆積物中で嫌気性メタン酸化(AOM)による自生炭酸塩及び硫化鉱物の存在が示唆される。またこれらの堆積物中ではMo及びAs含有量が顕著に濃縮していることが明らかにされた。MoとAsの含有量とTS含有量との正相関から、AOMによるH2Sによって形成された硫化鉱物中にMoとAsが取り込まれていると考えられる。本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一部として実施した。