日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-SD 宇宙開発・地球観測

[M-SD40] 将来の衛星地球観測

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.20

コンビーナ:本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、Shinichi Sobue(Japan Aerospace Exploration Agency)、山本 晃輔(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[MSD40-P12] 次世代降水観測レーダの技術実証

上土井 大助4、牛尾 知雄2、中村 健治3、古川 欣司4、沖 理子4、*高橋 暢宏1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、2.大阪大学、3.獨協大学、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:降水観測、ドップラーレーダ、展開アンテナ

本研究は、将来の静止軌道からの降水レーダ観測に関する基礎技術として、展開型アンテナを検討し、アンテナ展開機構についてプロトタイプを制作し地上試験において性能を確認した。さらに軌道上での主にアンテナ展開機構の実証を目的とした小型低軌道衛星(HTV-X1)の提案を行っている。

技術概要
実証する技術は次の2 つである。1 つ目は、降水ドップラ速度の計測技術であり、これは、軌道上から降水粒子のドップラ速度の計測を可能にするものである。2 つ目は、大型平面アンテナの構築技術であり、これは、平面アンテナの大型化を可能にし、30m×30m 以上の大型平面アンテナの軌道上構築を目指すものである。

技術的新規性/優位性
①降水ドップラ速度の計測技術について
EarthCARE 衛星搭載雲レーダにより、雲粒子のドップラ速度計測技術は確立される見込みであるが、降水粒子のドップラ速度計測技術は未だ確立していない。
②大型平面アンテナの構築技術について
衛星搭載用合成開口レーダを一次元展開により構築する技術は確立しているが、30m 級大型平面アンテナを二次元展開により構築する技術は未だ確立していない。また、太陽電池パドルを二次元展開により構築する技術は確立しているが、平面アンテナは太陽電池パドルよりも面精度や剛性の要求が厳しいため、太陽電池パドルの二次元展開技術では30m 級大型平面アンテナの構築に対応できない。なお、実証する機構のうち、新しい概念の結合機構である、「ソレノイドを用いた結合機構」については、JAXA が特許出願中である。

開発進捗
提案するミッションの実現性については、収納時1.2m×2.2m×0.7m、展開時1.2m×2.2m×4.4m の軌道上実証機を想定した場合、HTV-X 曝露カーゴ搭載部への搭載条件に適合する見込みを得ている。また、同実証機の熱解析を実施し、熱的に成立する見込みを得ている。さらに、2017 年度に同実証機の1/2 サイズで、アンテナ展開・結合機構が正常に動作することを地上実験により実証している。なお、軌道上実証機のサイズを、収納時に1.0m×1.0m×1.5m以下になるようにすると、構築後のアンテナサイズおよび降水エコーの検出感度は低下するものの必要な検証は可能と考えている。
2018 年度は、1 列目アンテナパネルが展開しなかった場合でも2 列目アンテナパネルが自立展開できる機構を考案し、同機構試作モデルによる地上実験を実施した。その結果、1.3kg 程度の質量追加で、2 列目アンテナパネルの自立展開機能が実現可能なことを確認した。
2019 年度は、HTV-X1 号機への搭載を想定した、展開型平面アンテナの予備設計を実施しており、その一環として、HTV-X 側とのインタフェース調整、パネル展開挙動解析、部分試作・試験等を実施している。