17:15 〜 18:30
[MZZ46-P06] 四万十帯北帯中の白亜紀層状鉄マンガン鉱床の形成環境:高解像度組織観察・元素分析結果からの制約
キーワード:四万十帯北帯、白亜紀中期、鉄マンガン酸化物
白亜紀中期は温暖な環境であり,赤道-極域の気温差縮小,海洋循環の停滞や,活発な基礎生産に伴った有機物の大量生成・埋没に伴う深層水の無酸素化が断続的に発生した.この温暖化は大規模な火山活動に伴う大量の温室効果ガスの放出によるものと考えられている.その結果,海洋における鉄マンガン酸化物の形成環境が限られていた可能性が指摘されているが2,現状の知見は比較的浅海の堆積相の研究結果に基づくものであり,当時の最大規模の海域だった太平洋地域からの知見は少ない.
高知県安芸市には,白亜紀中期に形成した四万十帯北帯が分布し,遠洋性の赤色チャート優勢の地層中に鉄マンガン酸化物層が挟在する3.全岩化学組成の分析結果は,高知県安芸市の四万十帯北帯の地層に含まれる金属元素を含む鉱物は熱水から沈殿したことを示唆された3.本研究ではさらに詳細に形成環境を解明するため,電子顕微鏡等による鉱石の高解像度組織観察を行い,鉄マンガン酸化物層内に数十~数百μmスケールのラミナ構造を見出した.また,EPMAやレーザーICP質量分析装置を用いて主要元素と希土類元素をはじめとする微量元素の濃度分析を行った.その結果,ラミナには鉄やマンガンなど金属元素の富むラミナと,金属元素とともに珪素が共存するラミナが認められた.また,前述の鉄マンガン酸化物層が挟在する地層に多く存在するチャート層からも金属元素を検出し,その濃度変動を見出した.さらに,先行研究で熱水沈殿の根拠の1つとして上げられたセリウム(Ce)の負の異常3は,本研究でもチャート層と鉄マンガン酸化物の両堆積層で認められたが,Ceの負の異常の程度の大きさ(Ce/Ce*比)にラミナスケールの変動を示した.
チャート層と互層をなす安芸地域の鉄マンガン酸化物層の形成環境について,本研究以前には次の2つの可能性が残っていた:①一定の熱水の影響を受ける環境で鉄マンガン酸化物層が生成し,チャート層を構成する放散虫などの生物沈降量が変動した;②生物沈降量は大きく変化せず,熱水の影響が変化した.本研究で明らかとなった,チャート層と鉄マンガン酸化物層の両堆積層に金属元素が含まれることと,Ceの負の異常が観察されたことは,本地域の両地層形成に熱水成分の寄与があったことを意味する.加えて,Ce/Ce*比の変動の存在は,本地域のチャート層と鉄マンガン酸化物層の両堆積時に熱水成分の寄与が刻々と変化したことを示唆する.
文献:Jenkyns, 2010. Gcubed; Roy, 2006, Earth-Sci Rev.; 藤永ほか, 2011. 資源地質.
高知県安芸市には,白亜紀中期に形成した四万十帯北帯が分布し,遠洋性の赤色チャート優勢の地層中に鉄マンガン酸化物層が挟在する3.全岩化学組成の分析結果は,高知県安芸市の四万十帯北帯の地層に含まれる金属元素を含む鉱物は熱水から沈殿したことを示唆された3.本研究ではさらに詳細に形成環境を解明するため,電子顕微鏡等による鉱石の高解像度組織観察を行い,鉄マンガン酸化物層内に数十~数百μmスケールのラミナ構造を見出した.また,EPMAやレーザーICP質量分析装置を用いて主要元素と希土類元素をはじめとする微量元素の濃度分析を行った.その結果,ラミナには鉄やマンガンなど金属元素の富むラミナと,金属元素とともに珪素が共存するラミナが認められた.また,前述の鉄マンガン酸化物層が挟在する地層に多く存在するチャート層からも金属元素を検出し,その濃度変動を見出した.さらに,先行研究で熱水沈殿の根拠の1つとして上げられたセリウム(Ce)の負の異常3は,本研究でもチャート層と鉄マンガン酸化物の両堆積層で認められたが,Ceの負の異常の程度の大きさ(Ce/Ce*比)にラミナスケールの変動を示した.
チャート層と互層をなす安芸地域の鉄マンガン酸化物層の形成環境について,本研究以前には次の2つの可能性が残っていた:①一定の熱水の影響を受ける環境で鉄マンガン酸化物層が生成し,チャート層を構成する放散虫などの生物沈降量が変動した;②生物沈降量は大きく変化せず,熱水の影響が変化した.本研究で明らかとなった,チャート層と鉄マンガン酸化物層の両堆積層に金属元素が含まれることと,Ceの負の異常が観察されたことは,本地域の両地層形成に熱水成分の寄与があったことを意味する.加えて,Ce/Ce*比の変動の存在は,本地域のチャート層と鉄マンガン酸化物層の両堆積時に熱水成分の寄与が刻々と変化したことを示唆する.
文献:Jenkyns, 2010. Gcubed; Roy, 2006, Earth-Sci Rev.; 藤永ほか, 2011. 資源地質.