日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[M-ZZ47] 再生可能エネルギーと地球科学

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.13 (Zoom会場13)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、野原 大輔(電力中央研究所)、島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、宇野 史睦(日本大学文理学部)、座長:島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)

15:32 〜 15:47

[MZZ47-02] 北海道後志総合振興局における小水力発電賦存量の評価

加藤 幹也2、*藤井 賢彦1,2 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院、2.北海道大学大学院環境科学院)

キーワード:小水力、地域活性化、河川生態系、人口、気候変動、分散型エネルギー

[背景・目的]

 近年の気候変動と自然災害の増加により、再生可能エネルギーへの注目が高まっている。菅 義偉首相は所信表明演説で「2050年にカーボンニュートラル(実質CO2排出ゼロ)を目指す」と述べ、政府としても自治体や企業、研究機関への支援を強める方針が示された。こうした中、小規模・分散型、ベースロード型、自給可能かつ温室効果ガスの排出が少ない発電が求められ、この条件を満たすエネルギー源のひとつとして小水力が挙げられる(澤舘, 2017)。小水力は開発、建設、維持にかかる雇用を地域で創出することができ(Fujii and Sawadate, 2018)、地方創生の観点からも有効な手段と言える。一方で大規模水力ほどでないとはいえ小水力においても、むやみな開発は河川生態系などの環境破壊につながる危険性がある。

本研究では、北海道 (2014)によって比較的大きな小水力発電賦存量が見積もられている北海道後志総合振興局を対象に小水力発電の賦存量計算を行い、環境要因と社会要因を考慮したうえで小水力発電所の適地を選定した。既往研究(田邊, 2015; 澤舘, 2017)では考慮されていなかった災害危険区域(土砂災害、洪水)を条件に加え、災害の際に自給可能な電源としての役割を強めた賦存量マップを作成し、地域における小水力の可能性の検討を行うことを目的とする。



[方法]

 既往研究(田邊, 2015; Rospriandana, 2016; 澤舘, 2017)の手法を参考に地理情報システム(GIS)ソフトウェアArcGIS 10.7.1(ESRI社)を用いて数値標高モデル(DEM)と降水量、土地利用データから河道の落差と流量を求め、発電量を見積もった。次に周辺の電力利用施設の有無、河川生態系への配慮、災害危険区域などの条件を踏まえて適地を選定した。初めに、将来的にも人口減少幅が比較的小さいと予想され、多数のインバウンド観光客を見込めることから現状相当の社会要因を念頭に置くことができる、またSDGs未来都市に選定されているニセコ町を対象に小水力賦存量の評価を行った。その後、対象を後志総合振興局に拡大し、市町村ごとに賦存量と、小水力で自給可能な割合を世帯数ベースで算出した。



[結果・考察]

 ニセコ町では全世帯数の3/4にあたる2,200世帯分に相当する 6,598MWhの小水力発電賦存量が見込まれた。周辺にホテルや別荘地がある地点もあり、これらの地域では小水力発電電力の地産地消の可能性が示唆された。また、赤井川村にも大きな賦存量が存在していることも分かった。一方で小樽市や倶知安町では人口も多いことから、小水力単体での自給率は高くないことも示された。ニセコ、キロロといったスノーリゾートと擁する町村では、地域と一体となって小水力開発を推し進めることで活性化にもつながり、ソフト、ハード両面において「強いまちづくり」のモデルとなる可能性が示唆された。