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[O-02] 自然災害と人 ~ジオパークで地球の声に耳を澄ます~

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(糸魚川市役所)、横山 光(北翔大学)

17:15 〜 18:30

[O02-P01] フォッサマグナミュージアムにおける新型コロナウイルス対応

*小河原 孝彦1、竹之内 耕1、茨木 洋介1、小林 猛生2、香取 拓馬2 (1.フォッサマグナミュージアム、2.糸魚川市役所ジオパーク推進室)

キーワード:糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、フォッサマグナミュージアム、新型コロナウイルス感染症対策

糸魚川フォッサマグナミュージアムは,糸魚川ユネスコ世界ジオパークの中核施設であり,1994年に開館し,2015年にリニューアルした地質系博物館である.ミュージアムの主要な展示物は糸魚川産のヒスイ,石灰岩の化石,糸魚川-静岡構造線と日本列島の成立ち等であり,2019年度は90,270人の来館者があった.
 2020年に入ってからのコロナ禍の問題は,フォッサマグナミュージアムの運営にも影響し,2020年度の入込客数は前年比49.4%(4月~11月)で推移している.そうした情勢下において,フォッサマグナミュージアムでは,①お客様が安心して来館できるコロナ予防・三密対策,②館内のバーチャルツアーや野外展示物の見どころを紹介するホームページ整備,③Zoomなどを利用した遠隔での博物館紹介,などの新たな取組みを進めてきた.

フォッサマグナミュージアムにおけるコロナ予防・三密対策
 フォッサマグナミュージアムでは,7都府県からの入館禁止(2020年4月8日~4月24日),入館時の検温と記帳(2020年4月8日~6月18日・検温については継続中),感染拡大を受けての臨時休館(2020年4月25日~5月30日),新潟県民に限定した入館規制(2020年6月1日~6月18日),石の鑑定サービスの休止(2020年3月9日~2021年3月末予定),化石の谷の利用休止(2020年4月1日~6月30日)などの対策を実施してきた.
 入館時の検温については,当初は職員による非接触式体温計による1名ごとの検温を実施していた.そのため,文化施設の感染症防止対策事業(補助金)を利用し,AIを搭載した自動検温装置を導入した.これは,入館者の体温を自動で測定し,マスクの着用が無い場合は注意を呼びかけるなどの機能が搭載されており,団体客が一気に入館した場合でも連続して測定が可能であるなど,入館時の三密対策に効果を発揮している.
 石の鑑定は,博物館独自の普及活動として来館者が持込む石に対して一人5個まで無料で石の名前を鑑定し,石の名前の書いたラベルを手渡す活動である.コロナ禍での三密対策として,整理券の配布やインターネットや電話での事前予約など検討はしたが実現には至らず,2021年3月末までの休止が決定している.
 そのため,フォッサマグナミュージアムでは,石の鑑定の代替策として糸魚川市観光協会が作成している石の標本キット「ひろっこ」を利用した野外鑑定教室(1回1,000円)を夏休み期間中に実施した.これは,1回10名限定とし,市内の海岸で学芸員指導の下で石の標本を作ることで夏休みの自由研究の助けとすることを主な目的としている.合計16回開催され,市内外から122名の参加者があり,石の鑑定の代替策として一定の効果があったと考えている.

館内のバーチャルツアーや野外展示物の見どころを紹介するホームページ整備
 感染拡大を受けての臨時休館が決定した前後から,休館時にどのように博物館を楽しむかということが課題となった.フォッサマグナミュージアムでは,糸魚川ジオパーク協議会の協力で2019年秋に北海道地図株式会社による3Dモデル撮影カメラ「Matterport」による展示室撮影とバーチャルツアー化を実施し,ホームページで公開していた.博物館の休館に伴い,ホームページのトップページに館内のバーチャルツアーを表示するように変更し,休館中も博物館内をバーチャルツアーで見学できるように配慮した.また,学芸員が出演する動画を地元ケーブルテレビ向けに撮影しホームページ上に掲載している.
 また,博物館は室内のため三密になる危険性があるなど,観光客に避けられることが指摘されていた.そのため,糸魚川ジオパーク協議会と協力し,野外で楽しむ糸魚川ユネスコ世界ジオパークのホームページを開設した.

Zoomなどを利用した新たな博物館紹介
 コロナ禍以降,ZoomなどWeb会議システムの利用が急速に発展している.フォッサマグナミュージアムでは,10月18日に新潟大学理学部の大学祭で,11月21日に日本ジオパークネットワーク中部ブロック大会でのZoomを利用したオンラインでの館内バーチャルツアーを実施している.これは,スマートフォンとジンバルを利用し携帯回線でZoomの会議室と接続することで館内の案内を実現した.中部ブロック大会では,博物館内の案内だけではなく,室内実験のリアルタイム配信や,事前に撮影していた動画の放送も実施している.
 バーチャルツアーの利点は,その地域に行くことなく体験できることであり,今までのツアーなど大人数での見学が難しい場所に関しても,バーチャルツアーであれば見学することができる可能性を秘めている.野外の場合は携帯回線が圏外になる可能性があるなど課題はあるが,コロナ禍後もZoomなどを利用した活動は継続していると考えられ,フォッサマグナミュージアムとしても対応を迫られている.