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[O-02] 自然災害と人 ~ジオパークで地球の声に耳を澄ます~

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(糸魚川市役所)、横山 光(北翔大学)

17:15 〜 18:30

[O02-P05] COVID-19下におけるオンライン配信機材を活用したジオツアーの実践

*森本 拓1 (1.島原半島ジオパーク協議会事務局)

キーワード:ライブ配信、オンラインジオツアー、Zoom、GoPro、モバイルWi-Fiルーター

1. はじめに
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中で社会活動に大きな影響を及ぼしている。ジオパーク活動においても、学習やイベントを延期または中止せざるを得ない場面が多く発生した。従来の「対面形式」での活動が困難になった一方で、「オンライン」でのジオパーク活動が注目されるようになった。
 島原半島ジオパーク協議会は、2020から2021年にかけて、オンライン会議システム「Zoom」を用いて、長崎県内外の中学校や高等学校を対象とした火山学習や、おおいた豊後大野ジオパークと連携した両地域の小学生の交流事業に参加した。これらのジオパーク活動は室内で行ったため、インターネットの通信環境(例、有線LANの整備)が安定さえすれば、容易に実施できることがわかった。
 一方で、屋外から配信したオンラインジオツアーは、配信機材の選び方をはじめ、現地の通信環境の確認やカメラワークの技術の習得など、室内での活動に比べて多大な労力を必要とした。本発表では、2020年度に島原半島ジオパーク協議会が行ったオンラインジオツアーの事例を紹介し、オンライン配信機材の種類や、各手法の利点と留意点および課題を報告する。

2. オンラインジオツアーで用いた配信機材について
 屋外から配信するオンラインジオツアーの機材は、モバイルWi-Fiルーターを用いて「Zoom(スマホ版)のみ」と「GoPro(ビデオカメラ)とZoom(PC版)の併用」の2通りの方法で実施した。前者は、Zoomアプリを入れたスマートフォンに、手ブレ防止機能を備えたスタビライザーを取り付け、現地を案内する方法である。この方法では、スマートフォンの画面越しの対話が可能になるため、ツアー中の質疑応答ができるという利点がある。その一方で、カメラ機能や集音機能が、使用するスマートフォンの性能に依存するのが難点である。後者は、GoProのライブストリーミング機能を用いて、YouTube、Twitch等のプラットフォームから生配信する方法である。使用するプラットフォームは、配信元から視聴者に伝わる配信の遅延時間が約10秒程度と短いTwitchがおすすめである。この方法では、GoPro購入費等の初期費用が5万円程度かかるものの、視聴者に鮮明な現地の風景を届けることができる。なお、GoPro単体では一方向の通信となるため、質疑応答を行う際は、別途PC等からZoomを繋ぐ必要がある。

3. オンラインジオツアーの実施における課題と留意点
 島原半島ジオパーク協議会は、日本ジオパーク再認定調査や大分県主催のイベントにて、認定ジオガイドによるオンラインジオツアーを実施した。その中で浮き彫りになった課題は、モバイルWi-Fiルーターの通信エリアが、使用する通信事業者の対応エリア内であっても、現地では繋がらない問題が発生することである。原因は不明だが、地形の隔たりや障害物がない開けた土地であっても繋がらないことがある。そのため、ツアーを実施する際には、予め現地の通信状況を入念に把握し、どこにモバイルWi-Fiルーターを設置するか等、ツアールートの設定が重要と考える。
 また、視聴者の画面酔いを防ぐカメラワークや風景を楽しむ時間「間」を設けることも必要である。ツアー実施時は、案内役のガイドの説明にあわせて事務局スタッフがカメラ操作を行ったが、ガイドの話の切り変わりや歩くスピードが速かったために、配信している風景と説明内容に「ズレ」が生じる場面が見られた。カメラの動きが速いと、視聴者の画面酔いを誘発する上、ツアーの魅力が十分に伝えられない。常に画面越しで観る視聴者の立場に立った案内を忘れてはいけないと考える。
 さらに、大分県主催のイベントでは、大分市民を対象に、島原半島の温泉地である小浜の「街歩き」を生配信する予定だったが、本番直前にGoProのライブ配信用のアプリが更新され、最新版のアプリとGoPro本体の機能との相性が悪くなったため、歩きながらの生配信ができなくなってしまった。そのため、街歩きは断念し、Zoom を繋いだPCの内蔵カメラから、PCを動かさずに映せる風景を案内した。こうした突然の機材トラブルは、今後も想定されるであろう。オンラインジオツアーを実施する際には、常に代替案をもって臨むことの重要性を強調しておきたい。

4. 今後の展望
 COVID-19の感染拡大に伴い実施したオンラインジオツアーでは、機材の準備やオンライン配信機材の扱い方に慣れれば、誰でも気軽に始められることがわかった。今後、オンラインジオツアーを実施するジオパークが増えれば、共通の題目(例、火山がもたらす恵みなど)で各ジオパークと連携したジオツアーを配信することが可能であろう。