日本地球惑星科学連合2021年大会

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[O-02] 自然災害と人 ~ジオパークで地球の声に耳を澄ます~

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(糸魚川市役所)、横山 光(北翔大学)

17:15 〜 18:30

[O02-P18] 下仁田から地球活動を探ろう~大地が語る太古のストーリー~

*原 秀男1 (1.ジオパーク下仁田協議会)

キーワード:地質多様性、ジオツーリズム、地学教育、ジオパーク、防災教育

 はじめに

群馬県南西部の下仁田町は中心市街地が高い山で囲まれた小盆地をなしており、信州の山間地と関東平野の狭間に位置する自然豊かな町です。下仁田ネギとコンニャクといった二大特産物があり、かつては信州と江戸を結ぶ街道筋として栄えた歴史もあります。世界文化遺産 荒船風穴をはじめとする自然・地形を利用した産業の名残りが町内に点在しており、全国で43か所ある日本ジオパークの1つとして地域資源を活かしたまちづくりを展開しています。また、令和元年に発生した東日本台風では、当地域でも水害などの被害をもたらし、これらを教訓にしたガイドツアーも地域では行われています。本論では、現在検討段階の地域から地球の活動を繋げる下仁田ジオパークのストーリー紹介と併せて、変化していく地球環境の中で地域から来訪客に何を伝えていくのかについて紹介します

 下仁田ジオパーク3つのストーリー
 ストーリーは群馬県立自然史博物館、下仁田自然学校、下仁田町自然史館の専門家によって検討して下記の3つにまとめているところです。
 ストーリー①海底から陸への大移動
  青岩公園に見られるような海底火山や大昔のサンゴ礁などの海底の地層によってできた岩盤を土台に、地殻変動によって、別の地層が押し出されてきて土台の上に覆い被さった「跡倉クリッペ」があります。こうして長い年月をかけて海から陸へ隆起してできた山々が削られてきできた川は、水車による蒟蒻精粉に適した地形となり、下仁田名産の蒟蒻産業を発展させてきました。

 ストーリー②信州の高原と関東平野をわけた太古の火山活動
 信州と関東平野の間には、今から約500年前のカルデラ火山噴出物が作る独特の山並みが広がります。火山活動がおさまり、長い年月風雨にさらされた結果、石門群などの奇岩が点在する妙義山や荒船山のような絶景が作り出されました。
この頃の火山活動によるマグマの冷え固まった硬い岩盤が崩落してできた斜面から冷たい冷気が噴き出し、蚕の卵の保管冷蔵施設として利用したのが世界文化遺産 荒船風穴。日本の絹産業による近代化を大きく支えた施設です。

 ストーリー③中央構造線に沿って発展した東西のモノとヒトを運んだ下仁田道。
下仁田は日本の地盤構造を大きく南北に分ける中央構造線沿いに発達した街道沿いに栄えた町で、人と文化が往来していました。これらの往来の起源ははるか昔までさかのぼることができ、馬山丘陵では、石器時代から各地と交流が盛んであった証拠を示す重要な遺跡があります。

 これらの大地のストーリーを主軸とした多様な地質が、地域の農産物や産業に密接にかかわって下仁田の歴史・文化を作り出しています。

 地域資源を活かしたまちづくりと減災教育

下仁田ジオパークでは、このような地域の資源を活用してガイドツーリズム、郷土愛の醸成や地域の担い手の育成を目的とした学校教育、地域の人たちの生涯教育、足元の大地を改めて見直した減災、地場産業の活性化などに取り組んでいます。

当地域のガイドツアーでは、度重なる大地の変動によってできた下仁田の自然から、壮大な地球の活動を伝えています。
 特に令和元年東日本台風では、地域内の河川が増水し、景色をかえました。地域を案内するガイドは、台風の時の増水時の写真や被害状況などを解説しながら、来訪者にきれいな景色の背後に、自然の脅威があることを伝えています。地域学習でガイドの話を聞いた人、当地域を訪れたガイドツアー利用者が自然を正しく理解し、災害に備えられるようになっていただきくことを期待します。