日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P02] 室戸海洋深層水が高知県室戸市にもたらす経済効果に関する考察 - 海洋深層水産業は地域活性化にいかに貢献するか -

*安岡 楓1 (1.高知県立室戸高等学校)

本研究は、高知県室戸市における新産業とも言える海洋深層水事業が、その地域に与えた経済効果について明らかにするものである。
 高知県室戸市東部沿岸地域の沖合2〜3kmの海中には、急激な崖が形成されており、水深が約1000mまで落ち込んでいる。その崖に海洋深層水がぶつかり「湧昇流」として陸地近くまで湧き上がっている。陸から非常に近い距に海洋深層水の取水が可能という地形の利を活かし、1989年には全国で初めての海洋深層水研究所兼取水施設が室戸岬(三津地区)に設立された(高知県海洋深層水研究所)。それ以降、多くの海洋深層水関連企業や取水施設が室戸市内に設立されている。これまでの調査の結果、海洋深層水関連企業や施設は、最も多い年で14件(2010年、2012年、2014年)、2019年現在で11件が存在している。
 こうした海洋深層水産業の展開は、地域内の新たな産業として定着している。深層水を加工した飲料水や化粧品などは全国的にPRされ、経済的な効果も大きなものであったと推測される。本研究ではそうした海洋深層水関連事業がもたらした経済効果を、1) 海洋深層水関連企業及び施設数、2)新規雇用の創出、3)海洋深層水施設利用者数などから室戸市に与える経済効果を分析する。データ収集・分析に関しては、室戸市産業振興課、室戸市所在の海洋深層水関連企業、室戸ジオパーク推進協議会など、複数の企業や団体に協力を仰ぎ収集している。
 また、海洋深層水の経済規模の大きさについては、室戸市内の漁業及び農業の経済規模と比較することで検証する。そこで上述の団体に加え、高知県室戸漁業指導所、JA高知県吉良川事業所などと連携してデータ収集を行っている。他業種と比較し、海洋深層水事業の経済活動に与える影響が大きいと判断できる場合、その要因についても検証する。これまでの聞き取り調査の結果によると、海洋深層水の事業規模は室戸市の中でも非常に大きく、また海洋深層水の商品としての売上も大きいにもかかわず、「なぜ事業規模がここまで拡大しているのか」という理由については分析や検証がされていない。本研究において、海洋深層水事業の広がりの理由を検証することは、室戸市全体の活性化のためのヒントにもなることが予想され、結果については広く共有していく。