日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P05] 人工ルビーの大型化

渡邉 充司1、*長津 雄一郎1、*畠山 萌永1、*松本 洸太朗1、*小宮山 雄大1 (1.静岡県立韮山高等学校)

キーワード:ルビー、フラックス法

宝石は地球深部の高温・高圧下で生成され、その美しさや希少性は多くの人々を魅了している。だが、宝石の需要に対してその産出量は少なく、それ故に宝石を人の手で生み出す技術も発展してきた。ルビーもその一つであり、現在人工ルビーは宝石としての利用に加え研磨剤としても利用されている。フラックス法による人工ルビーの生成に関しては先行研究が複数あるがそのほとんどが白金るつぼを用いた実験であり、高校生の実験として用いる上で白金るつぼはその購入費用が大きなハードルとなる。そこで我々は、白金るつぼを用いない人工ルビー結晶の生成および大型化を目標として、アルミナるつぼを用いた実験を行った。

本研究は、昨年度我が校で行われた研究を引き継いだものである。結晶の大きさと結晶生成時の温度変化(加熱温度や保温温度、冷却温度等)との関係に着目することで結晶の大型化を図った昨年度の研究に対し、私たちは様々ある結晶大型化の要因のうちから新たに凝結核による大型化と蒸発抑制剤の変化による大型化の2点に焦点を当てることで大型化を図った。

今実験ではフラックス法により結晶の生成を目指した。分量は、酸化アルミニウム1.08g、酸化モリブデン(Ⅵ)28.28g、炭酸ナトリウム0.64g炭酸リチウム0.40g、酸化クロム(Ⅲ) を基本として混合し、アルミナるつぼに入れ、各物質が均等になるようかき混ぜた後、電気炉内で加熱した。加熱後、るつぼの内壁に付着するような形で生成したルビーの結晶を削り出し、顕微鏡とミクロメーターを用いて大きさを計測した。この際、写真で結晶の色についても記録した。この一連の流れを主軸として仮設の内容ごとに試料の種類や分量を変化させ、それらを比較することで大型化に関係する要因を考察した。

最初の実験は昨年度の研究の対照実験として各試料の分量を変化させずに実験を行った。

生成したルビーの大きさは480µmで色は淡いピンクであった。またこの結果を以降の実験との比較対象とした。次の実験では結晶の付着面の面積を減らすことで単位面積当たりの結晶付着量が増加し大型化が見込めるのではないかと仮説を立て、セッコウをるつぼ内壁に塗布して実験を行った。側面のセッコウは加熱時に融解してしまい仮説の検証はできなかったものの結晶の大きさは650µmと大型化した。結晶の色は白色に変化したが、このことについてはセッコウが入ったことで全体に占める着色剤である酸化クロム(Ⅲ)の比率が低下したことで脱色が起こったと推測した。その点を踏まえ、次の実験ではセッコウの量を検量し酸化クロム(Ⅲ)の量を全体の0.5~1%になるよう調整した。その結果、結晶の大きさは980µm と過去最大の数値を示し色も鮮やかなピンク色に着色した。再現実験でも大きさは925µmであったことからセッコウが大型化に関係していると考察した。また、セッコウ以外の物質を用いても大型化が起こるのかを検証するため、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カリウムを用いて実験を進めた。硫酸カリウム混入時以外は結晶が生成せず、唯一生成した硫酸カリウム混入時も大きさは350μmと大型化したとは言えない数値だった。これらの実験に加えて蒸発抑制剤を試料に加えない、また蒸発抑制剤の分量のみを2倍にする実験をそれぞれ行った。結果、蒸発抑制剤を試料に加えない実験では予想通り180μmと小型化したものの、2倍時に関しても380μmと予想に反して大型化しなかった。こちらも再現実験を行ったが360μmと数値は変化せず、蒸発抑制剤の分量と結晶の大型化との間に強い相関は見られなかった。

以上の実験結果から、セッコウの存在が結晶の大型化に関与していること、セッコウ以外の物質で硫酸カリウム混入時に唯一結晶が生じたことから硫酸塩が大型化に関与している可能性があると考えられる。蒸発抑制剤と結晶の大型化に相関はあるが小さいと考えられ、量によって結晶の大きさが変化していることから、最適な蒸発抑制剤の量が0~2倍の間に存在すると考察した。