13:45 〜 15:15
[O07-P10] 北部フォッサマグナ地域における守屋層の形成過程について
キーワード:守屋層、フォッサマグナ
長野県諏訪市・伊那市にある守屋山周辺には、新第三系守屋層が分布する。守屋層では詳細な産出化石の記録や地質年代の決定が行われていない。そこで産出化石の記録や地質年代の決定から他地域との対比を可能にし、守屋層形成や堆積環境を明らかにしようと考えた。
本研究では堀内ら(2011)の層序区分に従い、守屋層下部の片倉礫岩砂岩泥岩部層、臼沢砂岩部層、後山黒色泥岩層に相当する23箇所の露頭で調査を行った。調査では岩相や走行傾斜、産出化石を調べ、地質年代の推測や地質図、柱状図の作成を行った。また守屋層と同じ北部フォッサマグナ地域にあり、地質時代が明らかにされている下仁田層川井砂岩泥岩部層と対比を行った。
守屋層にて調査を行ったところ、いくつかの露頭で走向傾斜を測定することができた。得られたデータに基づき、守屋層下部の地質図を作成した。また、2カ所の露頭から貝化石が産出し、これらを露頭A、Bと呼んだ。露頭Aは下位より火山灰質砂礫岩層、砂礫岩層、シルト岩層が、露頭Bは下位より火山灰質砂礫岩層、粗粒砂岩層、細粒砂岩層、粗粒砂岩層、シルト岩層が堆積する。産出した化石は、Macoma属など漸新世から発展していたもの、前期中新世、キムラホタテなど中期中新世に発展したもの、Anadara属など中新世以降発展していくものの4タイプに分けられた。貝化石以外にも、地質年代や堆積環境がわかる有孔虫化石を探したが、確認することはできなかった。
守屋層の地質年代を明らかにするため、群馬県下仁田町に分布する下仁田層川井砂岩泥岩部層と対比を行った。下仁田層は下位より神農原礫岩部層、岩山礫岩部層、川井砂岩泥岩部層から構成される。本地域は日本ジオパークに認定されており、露頭見学はできたが、守屋層で行ったような地質調査はできなかった。そのため、資料や先行研究などの文献を中心に調査を行った。下仁田町と周辺の地質(2009)や栗原ら(2008)を参考に、産出する化石を調べた。本層は全体的にMacoma属をはじめ、前期中新世の種が発展している。川井砂岩泥岩部層の地質年代について栗原ら(2005)はMytilus tichanovitchiを用いたSr同位体分析が20.4±0.2Maを示し、浮遊性有孔虫の産出等から上限は16.8Ma頃であるとした。また、Macoma属やMytilus tichanovitchiなど、いくつかの化石について守屋層と共通点が見られることがわかった。
これまでの調査結果に基づき、守屋層露頭A、B及び川井砂岩泥岩部層の柱状図を作成した。両層を比較すると、どちらも漸新世から発展していたMacoma属やMytilus tichanovitchiが産出するなど、共通点があることから両層の地質年代に大きな差はないと考えられる。また、守屋層では中期中新世の発展種が多く見られるが、川井砂岩泥岩部層では見られないこと、上部川井砂岩泥岩部層が16.8Ma頃を示すことから、守屋層の地質年代は上部川井砂岩泥岩部層より少し新しい1600-1700万年前頃と推定される。また、松丸ら(1982)は後山黒色泥岩部層から暖海域の大型高等有孔虫の産出を報告し、守屋層は温暖な海で形成されたと考えられている。本研究でも臼沢砂岩部層から温暖な海で発展した、中期中新世の門ノ沢動物群に特徴的なキムラホタテやAnadara属を産出した。しかし、守屋層から産出したMytilus tichanovitchiは前期中新世の寒冷化イベントの証拠とされている。その場合、臼沢砂岩部層は寒冷な海で堆積したと考えられ、先行研究の結果と一致しない。ただし、キムラホタテやAnadara属は有効な示相化石ではなく、寒冷な海に適応できた可能性もある。しかし、守屋層のように前期中新世の寒冷化イベント期の動物群と中期中新世の門ノ沢動物群の化石が共産する地層は、現時点では他に確認できていない。以上のことから、守屋層は、前期中新世と中期中新世頃の寒冷な海から温暖な海への移行期に堆積したと考えられる。
今後は、今回詳細がわからなかった守屋層最下部に当たる地域や断層の調査を行い、より詳細な地質図、柱状図の作成を行い、守屋層形成当初の様子について調査していきたい。また、守屋層から産出する門ノ沢動物群の化石種について、寒冷な海に適応できたのか、また守屋層と東北地域の関連性を調査していきたい。
本研究では堀内ら(2011)の層序区分に従い、守屋層下部の片倉礫岩砂岩泥岩部層、臼沢砂岩部層、後山黒色泥岩層に相当する23箇所の露頭で調査を行った。調査では岩相や走行傾斜、産出化石を調べ、地質年代の推測や地質図、柱状図の作成を行った。また守屋層と同じ北部フォッサマグナ地域にあり、地質時代が明らかにされている下仁田層川井砂岩泥岩部層と対比を行った。
守屋層にて調査を行ったところ、いくつかの露頭で走向傾斜を測定することができた。得られたデータに基づき、守屋層下部の地質図を作成した。また、2カ所の露頭から貝化石が産出し、これらを露頭A、Bと呼んだ。露頭Aは下位より火山灰質砂礫岩層、砂礫岩層、シルト岩層が、露頭Bは下位より火山灰質砂礫岩層、粗粒砂岩層、細粒砂岩層、粗粒砂岩層、シルト岩層が堆積する。産出した化石は、Macoma属など漸新世から発展していたもの、前期中新世、キムラホタテなど中期中新世に発展したもの、Anadara属など中新世以降発展していくものの4タイプに分けられた。貝化石以外にも、地質年代や堆積環境がわかる有孔虫化石を探したが、確認することはできなかった。
守屋層の地質年代を明らかにするため、群馬県下仁田町に分布する下仁田層川井砂岩泥岩部層と対比を行った。下仁田層は下位より神農原礫岩部層、岩山礫岩部層、川井砂岩泥岩部層から構成される。本地域は日本ジオパークに認定されており、露頭見学はできたが、守屋層で行ったような地質調査はできなかった。そのため、資料や先行研究などの文献を中心に調査を行った。下仁田町と周辺の地質(2009)や栗原ら(2008)を参考に、産出する化石を調べた。本層は全体的にMacoma属をはじめ、前期中新世の種が発展している。川井砂岩泥岩部層の地質年代について栗原ら(2005)はMytilus tichanovitchiを用いたSr同位体分析が20.4±0.2Maを示し、浮遊性有孔虫の産出等から上限は16.8Ma頃であるとした。また、Macoma属やMytilus tichanovitchiなど、いくつかの化石について守屋層と共通点が見られることがわかった。
これまでの調査結果に基づき、守屋層露頭A、B及び川井砂岩泥岩部層の柱状図を作成した。両層を比較すると、どちらも漸新世から発展していたMacoma属やMytilus tichanovitchiが産出するなど、共通点があることから両層の地質年代に大きな差はないと考えられる。また、守屋層では中期中新世の発展種が多く見られるが、川井砂岩泥岩部層では見られないこと、上部川井砂岩泥岩部層が16.8Ma頃を示すことから、守屋層の地質年代は上部川井砂岩泥岩部層より少し新しい1600-1700万年前頃と推定される。また、松丸ら(1982)は後山黒色泥岩部層から暖海域の大型高等有孔虫の産出を報告し、守屋層は温暖な海で形成されたと考えられている。本研究でも臼沢砂岩部層から温暖な海で発展した、中期中新世の門ノ沢動物群に特徴的なキムラホタテやAnadara属を産出した。しかし、守屋層から産出したMytilus tichanovitchiは前期中新世の寒冷化イベントの証拠とされている。その場合、臼沢砂岩部層は寒冷な海で堆積したと考えられ、先行研究の結果と一致しない。ただし、キムラホタテやAnadara属は有効な示相化石ではなく、寒冷な海に適応できた可能性もある。しかし、守屋層のように前期中新世の寒冷化イベント期の動物群と中期中新世の門ノ沢動物群の化石が共産する地層は、現時点では他に確認できていない。以上のことから、守屋層は、前期中新世と中期中新世頃の寒冷な海から温暖な海への移行期に堆積したと考えられる。
今後は、今回詳細がわからなかった守屋層最下部に当たる地域や断層の調査を行い、より詳細な地質図、柱状図の作成を行い、守屋層形成当初の様子について調査していきたい。また、守屋層から産出する門ノ沢動物群の化石種について、寒冷な海に適応できたのか、また守屋層と東北地域の関連性を調査していきたい。