13:45 〜 15:15
[O07-P12] 過去に発生した5回の巨大ジェットと対地雷との関係
キーワード:高高度発光現象、巨大ジェット、対地雷
1.動機・目的
静岡県磐田市の本校校舎では,2007年から高高度発光現象の観測を行っている.観測開始から現在までに,本校では4件の“巨大ジェット”(以下“ジェット”と表記)を観測した(図1).しかし,ジェットは発生頻度が極めて低いため,解明されていない点が多い.先行研究の山下ほか(2019)は,2017年のジェットの発生前後の対地雷の発生件数や落雷エネルギーに着目して,これらが減少傾向にあることを突き止めた.しかし,他のジェットについては不明である.そこで,本研究では他のジェットについても同様の傾向が見られるのか検証し,ジェット発生の原因を解明することにした.
2.ジェットとは
高高度発光現象とは,雷雲地上間放電に伴って雷雲上空,中間圏,熱圏下部で発生する発光現象の総称である.ジェットもこの一種で,下端は高度約20㎞,上端は高度約70~90㎞の逆円錐型の発光現象である.
3.仮説
ジェットは対地雷が少なく,落雷によるエネルギーの消費が小さい時に,積乱雲内に大きな電荷が蓄積されて発生する.
4.方法
高感度CCDカメラ(WAT-100N)で撮影されたジェットの画像を,動体検知ソフトで常時監視し,パソコンに自動記録をする.次に,全国の高校や一般の観測者の間に敷かれている共同観測ネットワークを利用して,他観測点にて同時観測された同一ジェットの観測記録から,三角測量の原理を用いてジェットの発生地点や高度を特定する.次にジェット発生地点の気象条件を気象衛星の赤外雲画像と比較する.さらにジェット発生前後の対地雷の発生件数,日時,場所,エネルギー量をWWLLN(World Wide Lightning Location Network)のデータから抽出し,発生地点とエネルギー量をGoogle Earthを用いて地図上に表す.なお,2008年11月29日に発生したジェットをジェットA,2010年11月30日をB,同年12月9日をC,2017年12月11日をD,2019年9月16日をEとした.
5.結果と考察
5-1 赤外雲画像との比較
図2はジェットEの発生時刻における赤外画像である.ジェットEは積乱雲西端で発生している.ジェット発生時刻周辺における赤外画像から,どのジェットも巨大な積乱雲の端で発生している傾向がみられる.
5-2 対地雷の空間分布
図3はジェットEの計6時間の対地雷分布である.ジェットEは対地雷群西端で発生している.ジェット発生時刻周辺における対地雷の空間分布図から,どのジェットも対地雷群の端で発生している傾向がみられる.
5-3 対地雷の発生回数とエネルギーの時間変化
図4,5はジェットEの前後計6時間の落雷件数と落雷エネルギーを示したものである.落雷件数,落雷エネルギーともにジェット発生時刻の2時間ほど前から減少傾向にある.他のジェットも,落雷件数の少ないジェットBを除くと,ジェット発生直前に減少していたり,対地雷が発生しなかったりする傾向がみられる.
表1は以上の結果をまとめたものである.
6.結論
ジェットは巨大積乱雲や対地雷の端で発生すること,ジェットが発生する前後では対地雷の発生件数が少なく,落雷のエネルギー量も小さくなる傾向があることが分かった.これは巨大積乱雲の端で,莫大な電荷が蓄積された場合に,ジェットが発生することを示唆している.
7.今後の課題
対地雷が無いもしくは減少傾向にあるときに,積乱雲内でどのような電荷の変化が生じているかを追求したい.また,なぜジェットが積乱雲の端で発生するのか,さらに落雷件数がジェット発生直前に減少する場合と,対地雷が発生しない場合の積乱雲の違いを解明したい.
謝辞・引用文献
WWLLNデータを提供して頂いた共同研究者の静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授鴨川先生,東京学芸大 鈴木智幸博士に感謝申し上げます.
・Sato, M.,(2004),Global lightning and sprite activities and their solar activity dependences
・山下直也. (2019). 2017年12月11日茨城県沖で発生した巨大ジェットの特徴. 高知工科大学研究紀要16,1,215-228. ・高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/)
・Google Earth Data SIO,NOAA,U.S.Navy,NGA,GEBCC Image Landsat/Copernicus Data LDEO-Columbia,NSF,NOAA
静岡県磐田市の本校校舎では,2007年から高高度発光現象の観測を行っている.観測開始から現在までに,本校では4件の“巨大ジェット”(以下“ジェット”と表記)を観測した(図1).しかし,ジェットは発生頻度が極めて低いため,解明されていない点が多い.先行研究の山下ほか(2019)は,2017年のジェットの発生前後の対地雷の発生件数や落雷エネルギーに着目して,これらが減少傾向にあることを突き止めた.しかし,他のジェットについては不明である.そこで,本研究では他のジェットについても同様の傾向が見られるのか検証し,ジェット発生の原因を解明することにした.
2.ジェットとは
高高度発光現象とは,雷雲地上間放電に伴って雷雲上空,中間圏,熱圏下部で発生する発光現象の総称である.ジェットもこの一種で,下端は高度約20㎞,上端は高度約70~90㎞の逆円錐型の発光現象である.
3.仮説
ジェットは対地雷が少なく,落雷によるエネルギーの消費が小さい時に,積乱雲内に大きな電荷が蓄積されて発生する.
4.方法
高感度CCDカメラ(WAT-100N)で撮影されたジェットの画像を,動体検知ソフトで常時監視し,パソコンに自動記録をする.次に,全国の高校や一般の観測者の間に敷かれている共同観測ネットワークを利用して,他観測点にて同時観測された同一ジェットの観測記録から,三角測量の原理を用いてジェットの発生地点や高度を特定する.次にジェット発生地点の気象条件を気象衛星の赤外雲画像と比較する.さらにジェット発生前後の対地雷の発生件数,日時,場所,エネルギー量をWWLLN(World Wide Lightning Location Network)のデータから抽出し,発生地点とエネルギー量をGoogle Earthを用いて地図上に表す.なお,2008年11月29日に発生したジェットをジェットA,2010年11月30日をB,同年12月9日をC,2017年12月11日をD,2019年9月16日をEとした.
5.結果と考察
5-1 赤外雲画像との比較
図2はジェットEの発生時刻における赤外画像である.ジェットEは積乱雲西端で発生している.ジェット発生時刻周辺における赤外画像から,どのジェットも巨大な積乱雲の端で発生している傾向がみられる.
5-2 対地雷の空間分布
図3はジェットEの計6時間の対地雷分布である.ジェットEは対地雷群西端で発生している.ジェット発生時刻周辺における対地雷の空間分布図から,どのジェットも対地雷群の端で発生している傾向がみられる.
5-3 対地雷の発生回数とエネルギーの時間変化
図4,5はジェットEの前後計6時間の落雷件数と落雷エネルギーを示したものである.落雷件数,落雷エネルギーともにジェット発生時刻の2時間ほど前から減少傾向にある.他のジェットも,落雷件数の少ないジェットBを除くと,ジェット発生直前に減少していたり,対地雷が発生しなかったりする傾向がみられる.
表1は以上の結果をまとめたものである.
6.結論
ジェットは巨大積乱雲や対地雷の端で発生すること,ジェットが発生する前後では対地雷の発生件数が少なく,落雷のエネルギー量も小さくなる傾向があることが分かった.これは巨大積乱雲の端で,莫大な電荷が蓄積された場合に,ジェットが発生することを示唆している.
7.今後の課題
対地雷が無いもしくは減少傾向にあるときに,積乱雲内でどのような電荷の変化が生じているかを追求したい.また,なぜジェットが積乱雲の端で発生するのか,さらに落雷件数がジェット発生直前に減少する場合と,対地雷が発生しない場合の積乱雲の違いを解明したい.
謝辞・引用文献
WWLLNデータを提供して頂いた共同研究者の静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授鴨川先生,東京学芸大 鈴木智幸博士に感謝申し上げます.
・Sato, M.,(2004),Global lightning and sprite activities and their solar activity dependences
・山下直也. (2019). 2017年12月11日茨城県沖で発生した巨大ジェットの特徴. 高知工科大学研究紀要16,1,215-228. ・高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/)
・Google Earth Data SIO,NOAA,U.S.Navy,NGA,GEBCC Image Landsat/Copernicus Data LDEO-Columbia,NSF,NOAA