13:45 〜 15:15
[O07-P15] 水中蛇型ロボットに脚をつけたら蛇足か?
~テトラポドフィスの真実を求めて~
キーワード:テトラポドフィス、ロボ化石、復元
私たちはロボットを用いて古生物を調べる新たな「ロボ化石」という研究手法に出会った。そこで昨年から蛇の祖先とされる、脚を持つ古生物であるテトラポドフィスをロボットとして復元し、その脚にどのような用途があったのかを研究している。
研究対象は、テトラポドフィスという古生物である。テトラポドフィスは四肢のある蛇型の古生物で、1億1千万年前から1億2千万年前に生息していたと考えられている。研究内容は、ロボットでテトラポドフィスの化石から予想される姿を模倣し、その脚が蛇足であったのかを調べることである。古生物は現代の生物に比べて進化段階であるため、単純かつ効率の良い動きをしていたと考えられる。そのため、化石から予想される姿を模倣することで一見すると無駄であるように見える脚の役割を考えたい。
この研究ではロボットで古生物を模倣することで、さらにその動きや生態を解明していくことができると考えている。
古生物学の最も重要な研究対象のひとつとして、生物の進化があげられる。化石は、実際の生命進化のパターンを示す唯一の証拠であるといえる。その一方で、化石に残るのは元々の生物の持つ情報のごく一部だけであるという問題もある。たとえば脊椎動物では、通常の化石に残るのは骨や歯などの鉱物化した硬組織だけである。筋肉、中枢神経、内蔵などはまとめて軟組織と呼ばれ、動物の死後短期間で腐敗し、特殊な環境を除いて化石には残らない。つまり絶滅した生物についてのこれら軟組織の情報は、化石だけを見ていただけでは得られないのでる。そこで化石をロボットで復元し検証することにより定かでない軟組織部についての予想が可能になる。また各部分で条件を変え移動の速さや動き方の特徴などのデータを取ることにより有用性の高い部分と有用性の低い部分を知ることができるようになる。これにより機能の進化と衰退を予想することが可能になり、これは生物の進化や生態の研究に役立つ有益な情報になると考えられる。
テトラポドフィスの文献調査から分かった脚の役割についての説は、陸上での生活において、獲物や交尾相手をつかまえるために脚が使われていたという説や、水中でパドルのような形で泳いだり舵を取ったりするのに用いられていたという説もある。そのため、テトラポドフィスの脚がどのように使われていたかの結論は今のところ出ていない。
発見されているテトラポドフィスの化石の全長は20cmであり、手足は約1.5cmと全長に対し非常に小さい。また化石に残された後ろ脚は前脚に比べて骨や骨盤がしっかりしているため、後ろ脚のほうがよく使われていたと考えられる。また、四肢の骨格には指のようなものがあるが、現生の動物でもそうであるように、掌と同じかそれ以上の大きさの水掻きのようなものがついていた可能性があると考えられる。
テトラボドフィスの脚の役割についてより深く追求するため、実験では、テトラポドフィスの化石を基に水中蛇型ロボットを製作し、脚の役割についての検証を行った。その結果、前脚があると方向転換しやすく、後脚があると泳ぎ方が安定するということがわかった。前脚は小さいために推進力向上の効果は少ないが、後ろ脚をうまく使えば泳いでいる時の瞬発力が増えるので、後脚には大きな効果があったと考えられる。また、尾と後脚を同時に動かした場合、ロボットの動きが安定するとともに泳いでいるときの推進力が増した。このことから水中蛇型ロボットに脚をつけることは現時点では意味があったと言える。水中蛇型ロボットに手脚をつけることによって機能性を上げることが可能であった。よって水中蛇型ロボットに脚をつけても蛇足とは限らないことがわかった。
今後の展望として解決したい課題は3つある。1つ目は蛇型ロボットに、より生物らしい動作をさせることである。私たちのロボットは潜水浮上ができない。これを可能にすることで、さらに多様な脚の使い方を発見できると考えるとともに、脚のある必要を検証できると予想している。2つ目は生息環境を特定することである。化石の発見された地層は浅い内海であったと考えられている。そのため私たちは水生生物であったと予想している。その証明のためロボットが陸上で歩くことができるか検証することで、陸上でも活動することができていたのかどうか解明できると考えている。3つ目は復元図の証明である。古生物をロボットで再現する際、ロボットが遊泳できなかったり、予想される生活環境に合わない動きをしたりする場合、その姿は正しい復元ではないと考えられる。よって私たちは理にかなった動きをするロボットの形が本当の古生物の姿の証明に使えるものになると考えている。
この3つの課題を解決しこの研究により、水中・陸上の古生物の研究にロボットを用いることが広まることを期待している。
研究対象は、テトラポドフィスという古生物である。テトラポドフィスは四肢のある蛇型の古生物で、1億1千万年前から1億2千万年前に生息していたと考えられている。研究内容は、ロボットでテトラポドフィスの化石から予想される姿を模倣し、その脚が蛇足であったのかを調べることである。古生物は現代の生物に比べて進化段階であるため、単純かつ効率の良い動きをしていたと考えられる。そのため、化石から予想される姿を模倣することで一見すると無駄であるように見える脚の役割を考えたい。
この研究ではロボットで古生物を模倣することで、さらにその動きや生態を解明していくことができると考えている。
古生物学の最も重要な研究対象のひとつとして、生物の進化があげられる。化石は、実際の生命進化のパターンを示す唯一の証拠であるといえる。その一方で、化石に残るのは元々の生物の持つ情報のごく一部だけであるという問題もある。たとえば脊椎動物では、通常の化石に残るのは骨や歯などの鉱物化した硬組織だけである。筋肉、中枢神経、内蔵などはまとめて軟組織と呼ばれ、動物の死後短期間で腐敗し、特殊な環境を除いて化石には残らない。つまり絶滅した生物についてのこれら軟組織の情報は、化石だけを見ていただけでは得られないのでる。そこで化石をロボットで復元し検証することにより定かでない軟組織部についての予想が可能になる。また各部分で条件を変え移動の速さや動き方の特徴などのデータを取ることにより有用性の高い部分と有用性の低い部分を知ることができるようになる。これにより機能の進化と衰退を予想することが可能になり、これは生物の進化や生態の研究に役立つ有益な情報になると考えられる。
テトラポドフィスの文献調査から分かった脚の役割についての説は、陸上での生活において、獲物や交尾相手をつかまえるために脚が使われていたという説や、水中でパドルのような形で泳いだり舵を取ったりするのに用いられていたという説もある。そのため、テトラポドフィスの脚がどのように使われていたかの結論は今のところ出ていない。
発見されているテトラポドフィスの化石の全長は20cmであり、手足は約1.5cmと全長に対し非常に小さい。また化石に残された後ろ脚は前脚に比べて骨や骨盤がしっかりしているため、後ろ脚のほうがよく使われていたと考えられる。また、四肢の骨格には指のようなものがあるが、現生の動物でもそうであるように、掌と同じかそれ以上の大きさの水掻きのようなものがついていた可能性があると考えられる。
テトラボドフィスの脚の役割についてより深く追求するため、実験では、テトラポドフィスの化石を基に水中蛇型ロボットを製作し、脚の役割についての検証を行った。その結果、前脚があると方向転換しやすく、後脚があると泳ぎ方が安定するということがわかった。前脚は小さいために推進力向上の効果は少ないが、後ろ脚をうまく使えば泳いでいる時の瞬発力が増えるので、後脚には大きな効果があったと考えられる。また、尾と後脚を同時に動かした場合、ロボットの動きが安定するとともに泳いでいるときの推進力が増した。このことから水中蛇型ロボットに脚をつけることは現時点では意味があったと言える。水中蛇型ロボットに手脚をつけることによって機能性を上げることが可能であった。よって水中蛇型ロボットに脚をつけても蛇足とは限らないことがわかった。
今後の展望として解決したい課題は3つある。1つ目は蛇型ロボットに、より生物らしい動作をさせることである。私たちのロボットは潜水浮上ができない。これを可能にすることで、さらに多様な脚の使い方を発見できると考えるとともに、脚のある必要を検証できると予想している。2つ目は生息環境を特定することである。化石の発見された地層は浅い内海であったと考えられている。そのため私たちは水生生物であったと予想している。その証明のためロボットが陸上で歩くことができるか検証することで、陸上でも活動することができていたのかどうか解明できると考えている。3つ目は復元図の証明である。古生物をロボットで再現する際、ロボットが遊泳できなかったり、予想される生活環境に合わない動きをしたりする場合、その姿は正しい復元ではないと考えられる。よって私たちは理にかなった動きをするロボットの形が本当の古生物の姿の証明に使えるものになると考えている。
この3つの課題を解決しこの研究により、水中・陸上の古生物の研究にロボットを用いることが広まることを期待している。