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[O07-P23] 現地調査に基づく地熱発電利⽤の現状と課題へのアプローチ
キーワード:地熱発電、エネルギー
我々の電気エネルギー消費量は増加の一途をたどっている。現在,そのエネルギーの多くを火力発電に依存している状況が続いているが,化石燃料のほとんどが輸入に頼っていること,CO2など温室効果ガスを大量に排出することが問題視されてきた。私たちは,地域の特色である「地熱資源の有効活用」について調査・学習する中で,地熱発電には発電コストの低さや環境への負荷の低さなど大きな利点がある一方,日本では資源量の割に普及率が低いという事実を知った。今後,持続可能な社会を構築するためには,地熱エネルギーの活用は必須ともいえる。私たちは,地域特有のエネルギー資源である地熱発電について,現地見学や参考文献をもとに地熱エネルギーとその活用について現状と課題を明確にし,地熱エネルギーの活用へ向けた科学的なアプローチのあり方を見出すことを目的として実習や調査を行った。その結果から科学的にアプローチしようと本研究に取り組んだ。
2020年8月23日,隣の岩手県にある対照的かつ特徴的な2つの発電所を見学した。商用の発電所として日本初の松川地熱発電所と2019年に本格稼働した,民間が経営する新しいスタイルの松尾八幡平地熱発電所である。現地実習を終えて,各発電所は共にほぼ無人で火力や原子力に比べれば圧倒的に運用のための人件費は少ないと考えた。その割に発電量は大きく,環境への負荷もかからず,発電コスト自体も小さい地熱発電はまさに,これからの時代にマッチした発電方法と感じた。にもかかわらず,松尾八幡平地熱発電所が国内で22年ぶりに本格稼働したということから,地熱発電所の導入は停滞しているように思える。その理由を考えると,松川地熱発電所に見られた追加の生産井の掘削など,建設コストの大きさとそれに対する売電収入のバランスに興味をもち,松川地熱発電所を例に地熱発電におけるコスト試算を行った。最大認可出力が23,500kWhである(以下,kWとする)。一般的に80万円/kW~120万円/kWの設備費用なので,松川地熱発電所の設備費用は188億円~282億円だと推測できる。調査費用35億円と仮定して上乗せ(タイナビ発電所WEBサイトより)すると,最大で総額317億円とする。発電コストを10円/kWhとし,固定価格買取制度により地熱発電による電気の調達期間を15年間とすると,1kWhあたりの買取価格は26円で,23,500kW×26円=611,000円(61万1,000円)…1時間あたり建設費用の元を取るには,31,700,000,000÷611,000=51,882時間かかる。51,882時間=約2,162日,2,162日=5年+337日。よって,最大出力23,500kWの松川地熱発電所がフル稼働で休まずに発電をした場合,5年と337日で元が取れることになる(発電コストは581,010円)。実際にはさらに追加井の建設費などもかかる。地熱発電の場合,建設等コストの回収までに稼働後15年ほどかかるといわれ,実際には長くて20年近くかかることもあるようだ。これは,熱効率の問題や,発電の過程で地中からの熱の約8割が空気中に逃げてしまうことなどが原因となっているようである。
地熱と同じ再生可能エネルギーとされる風力,太陽光,水力発電は各地に点在しているのに対して,現状として地熱発電は地域が限定的である。このことから,国内における地熱発電所の建設は飽和したとはいえない。主に北海道,東北,九州に集中しており,地下に安定した熱水系があることが必須で,場所が限定されていることなどが原因と考えられるが,他の理由についても考察する必要がある。
最近注目されているのが「温泉バイナリー」である。温泉地で湧出する温度が高すぎる温泉熱水は,そのままの温度では浴用として利用できないため冷却される。この過程で行うバイナリー発電が,温泉バイナリーである。温泉成分を損なうことなく高温(70~120℃)の温泉熱水で発電,さらに温度の低下した熱水を浴用に利用できる2つのメリットがある。大崎市鳴子の温泉旅館で,温泉バイナリー発電が行われており,今後の現地視察を検討している。また,今回の調査から明らかになった課題の解消に向けて地熱発電模型を製作している。地熱発電模型は段ボールを用いて火山をイメージし,内部に圧力鍋を設置して生産井を再現している。外部にはタービンをつけて発電所をイメージしている。これを利用して,現在行っているタービンの形状による発電効率, 発電に伴う熱エネルギーの損失などの研究を実験を通してしたい。そして,これらの模型を活⽤した地域の⼩中学⽣へのエネルギー教育普及を⽬指している。
2020年8月23日,隣の岩手県にある対照的かつ特徴的な2つの発電所を見学した。商用の発電所として日本初の松川地熱発電所と2019年に本格稼働した,民間が経営する新しいスタイルの松尾八幡平地熱発電所である。現地実習を終えて,各発電所は共にほぼ無人で火力や原子力に比べれば圧倒的に運用のための人件費は少ないと考えた。その割に発電量は大きく,環境への負荷もかからず,発電コスト自体も小さい地熱発電はまさに,これからの時代にマッチした発電方法と感じた。にもかかわらず,松尾八幡平地熱発電所が国内で22年ぶりに本格稼働したということから,地熱発電所の導入は停滞しているように思える。その理由を考えると,松川地熱発電所に見られた追加の生産井の掘削など,建設コストの大きさとそれに対する売電収入のバランスに興味をもち,松川地熱発電所を例に地熱発電におけるコスト試算を行った。最大認可出力が23,500kWhである(以下,kWとする)。一般的に80万円/kW~120万円/kWの設備費用なので,松川地熱発電所の設備費用は188億円~282億円だと推測できる。調査費用35億円と仮定して上乗せ(タイナビ発電所WEBサイトより)すると,最大で総額317億円とする。発電コストを10円/kWhとし,固定価格買取制度により地熱発電による電気の調達期間を15年間とすると,1kWhあたりの買取価格は26円で,23,500kW×26円=611,000円(61万1,000円)…1時間あたり建設費用の元を取るには,31,700,000,000÷611,000=51,882時間かかる。51,882時間=約2,162日,2,162日=5年+337日。よって,最大出力23,500kWの松川地熱発電所がフル稼働で休まずに発電をした場合,5年と337日で元が取れることになる(発電コストは581,010円)。実際にはさらに追加井の建設費などもかかる。地熱発電の場合,建設等コストの回収までに稼働後15年ほどかかるといわれ,実際には長くて20年近くかかることもあるようだ。これは,熱効率の問題や,発電の過程で地中からの熱の約8割が空気中に逃げてしまうことなどが原因となっているようである。
地熱と同じ再生可能エネルギーとされる風力,太陽光,水力発電は各地に点在しているのに対して,現状として地熱発電は地域が限定的である。このことから,国内における地熱発電所の建設は飽和したとはいえない。主に北海道,東北,九州に集中しており,地下に安定した熱水系があることが必須で,場所が限定されていることなどが原因と考えられるが,他の理由についても考察する必要がある。
最近注目されているのが「温泉バイナリー」である。温泉地で湧出する温度が高すぎる温泉熱水は,そのままの温度では浴用として利用できないため冷却される。この過程で行うバイナリー発電が,温泉バイナリーである。温泉成分を損なうことなく高温(70~120℃)の温泉熱水で発電,さらに温度の低下した熱水を浴用に利用できる2つのメリットがある。大崎市鳴子の温泉旅館で,温泉バイナリー発電が行われており,今後の現地視察を検討している。また,今回の調査から明らかになった課題の解消に向けて地熱発電模型を製作している。地熱発電模型は段ボールを用いて火山をイメージし,内部に圧力鍋を設置して生産井を再現している。外部にはタービンをつけて発電所をイメージしている。これを利用して,現在行っているタービンの形状による発電効率, 発電に伴う熱エネルギーの損失などの研究を実験を通してしたい。そして,これらの模型を活⽤した地域の⼩中学⽣へのエネルギー教育普及を⽬指している。