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[O07-P29] 三陸ジオパークとSDGs 青葉湖・島守盆地
キーワード:三陸ジオパーク北部エリア、島守盆地、青葉湖、世増ダム、地域活動、科学クラブ
三陸ジオパークは、青森県から宮城県にかけての太平洋岸に、南北約300㎞の海岸線をもち、118のジオサイトが設定されている。マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニアの属する八戸市水産科学館マリエントはその北端部にある。筆者らは、2018年度から郷土を学習する活動として三陸ジオパークについて学習してきた。巡検と観察、討論を元に協同学習を進め、知識の共有と情報発信の態度を育成するため「ジオ紙芝居」を作成し、実演してきた。その成果をJPGU2019と第10回日本ジオパーク全国大会2019おおいた大会、JPGU2020においてポスターと口頭で発表してきた。
2020年度のジオパークに関係する活動は、現地での巡検と三陸ジオパーク認定ガイドの講義とジオ紙芝居の作成,協同の学びによって,水をめぐる地域の知恵がSDGsのターゲット6(安全な水とトイレを世界中に)の達成に役立つ可能性について検討した。
青森県八戸市の南東に位置する三陸ジオパークのジオサイト青葉湖・島守盆地(図1)は「島守盆地 田園空間博物館」事業の展開により2020年にジオサイトに組み入れられた。北部北上帯の付加体で、海成段丘と階上岩体により隆起した台地を新井田川が深く浸食してできた渓谷と盆地からなる。平家の落人伝説にその名が由来する青葉湖は、世増ダムの貯水湖で、江戸末期から八戸藩士による治水事業をうけついで完成したため、三陸ジオパークの「文化」カテゴリーに分類されている。島守盆地は、のどかな田園風景が広がる。鎌倉時代の古文書に「すまもり」と記され、東北地方の北部には稀な中世の水田跡が残っている。周辺部の岩盤とそれに起因する川の蛇行、豊かな湧水などにより、三陸ジオパークの「ジオ」「自然」カテゴリーに分類されている。新しいジオサイトであるため、認知度は低い。
「持続可能な開発目標」であるSDGsの達成は、現在、社会と個人が分野で取り組み、推進していかなければならない課題となっている。ジオパーク活動はSDGsとの係わりが深く、ユネスコ世界ジオパークは、2017年にジオパークが貢献できるSDGsの8個のターゲットについて発表している。
高等学校でも広く、探究学習を中心としてSDGsに関する学習が進められている。筆者らは、八戸市とその周辺にある高等学校から学年を越えて集まっているため、学校ごとの取り組みの違いや個人ごとの理解度の差などの問題があった。この問題はジオ紙芝居を活用して解決できた。
筆者らは、新しいジオサイトに親しんでもらう事とSDGsへの理解を深めてもらう事を目的に、ジオ紙芝居を「世増ダムとごはん」、「新井田川の蛇行」、「島守の湧水群」(写真1)のテーマで作成した。
「世増ダムとごはん」は、ダムの水量を米に換算し、八戸市民のどれだけの食事をまかなうことができるかを解説し、SDGsのターゲット6(安全な水とトイレを世界中に)とターゲット2(飢餓をゼロに)にくわえ、仮想水にかかわる内容まで盛り込んだ。「新井田川の蛇行」はのどかな島守盆地と盆地をはさんである深く蛇行する渓谷の地質的おもしろさについて説明し、SDGsのターゲット6とターゲット15(陸の豊かさを守ろう)について言及した。「島守の湧水群」は、湧水が集落の成立と継続の条件であり、世代をこえて管理と整備が継続してきた点に注目し、SDGsのターゲット6とターゲット11(住み続けられるまちづくりを)とターゲット15について言及した。この紙芝居の解説に「農村に対する一人一人の感度をあげる」とあり、理屈を超えた心のうごきもSDGsの達成に必要であると訴えている。原画や説明は、以前に作成した物を参考にし、分担して作成した。会員内で実演して何度も訂正を繰り返して作成した。
ただし4月15日時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)への配慮により公開は会員のみにとどまっている。今後に向けて、ジオ紙芝居の公開やジオサイトの観察ルートの設定、ガイドブックの作成も計画している。
この活動を通じて、私たちは今も動いている大地に暮らし、その恵みを受けていることが理解できた。ジオサイト島守盆地と青葉湖を、SDGsの視点で見ることによって先人の知恵を学び、持続可能な開発を提案したい。また、この考えをジオ紙芝居を使って多くの人に伝えていきたい。
謝辞
この研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、洋野町、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校はじめ多くの方々からご指導とご協力をいただいた。記してここに謝意を表する。
2020年度のジオパークに関係する活動は、現地での巡検と三陸ジオパーク認定ガイドの講義とジオ紙芝居の作成,協同の学びによって,水をめぐる地域の知恵がSDGsのターゲット6(安全な水とトイレを世界中に)の達成に役立つ可能性について検討した。
青森県八戸市の南東に位置する三陸ジオパークのジオサイト青葉湖・島守盆地(図1)は「島守盆地 田園空間博物館」事業の展開により2020年にジオサイトに組み入れられた。北部北上帯の付加体で、海成段丘と階上岩体により隆起した台地を新井田川が深く浸食してできた渓谷と盆地からなる。平家の落人伝説にその名が由来する青葉湖は、世増ダムの貯水湖で、江戸末期から八戸藩士による治水事業をうけついで完成したため、三陸ジオパークの「文化」カテゴリーに分類されている。島守盆地は、のどかな田園風景が広がる。鎌倉時代の古文書に「すまもり」と記され、東北地方の北部には稀な中世の水田跡が残っている。周辺部の岩盤とそれに起因する川の蛇行、豊かな湧水などにより、三陸ジオパークの「ジオ」「自然」カテゴリーに分類されている。新しいジオサイトであるため、認知度は低い。
「持続可能な開発目標」であるSDGsの達成は、現在、社会と個人が分野で取り組み、推進していかなければならない課題となっている。ジオパーク活動はSDGsとの係わりが深く、ユネスコ世界ジオパークは、2017年にジオパークが貢献できるSDGsの8個のターゲットについて発表している。
高等学校でも広く、探究学習を中心としてSDGsに関する学習が進められている。筆者らは、八戸市とその周辺にある高等学校から学年を越えて集まっているため、学校ごとの取り組みの違いや個人ごとの理解度の差などの問題があった。この問題はジオ紙芝居を活用して解決できた。
筆者らは、新しいジオサイトに親しんでもらう事とSDGsへの理解を深めてもらう事を目的に、ジオ紙芝居を「世増ダムとごはん」、「新井田川の蛇行」、「島守の湧水群」(写真1)のテーマで作成した。
「世増ダムとごはん」は、ダムの水量を米に換算し、八戸市民のどれだけの食事をまかなうことができるかを解説し、SDGsのターゲット6(安全な水とトイレを世界中に)とターゲット2(飢餓をゼロに)にくわえ、仮想水にかかわる内容まで盛り込んだ。「新井田川の蛇行」はのどかな島守盆地と盆地をはさんである深く蛇行する渓谷の地質的おもしろさについて説明し、SDGsのターゲット6とターゲット15(陸の豊かさを守ろう)について言及した。「島守の湧水群」は、湧水が集落の成立と継続の条件であり、世代をこえて管理と整備が継続してきた点に注目し、SDGsのターゲット6とターゲット11(住み続けられるまちづくりを)とターゲット15について言及した。この紙芝居の解説に「農村に対する一人一人の感度をあげる」とあり、理屈を超えた心のうごきもSDGsの達成に必要であると訴えている。原画や説明は、以前に作成した物を参考にし、分担して作成した。会員内で実演して何度も訂正を繰り返して作成した。
ただし4月15日時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)への配慮により公開は会員のみにとどまっている。今後に向けて、ジオ紙芝居の公開やジオサイトの観察ルートの設定、ガイドブックの作成も計画している。
この活動を通じて、私たちは今も動いている大地に暮らし、その恵みを受けていることが理解できた。ジオサイト島守盆地と青葉湖を、SDGsの視点で見ることによって先人の知恵を学び、持続可能な開発を提案したい。また、この考えをジオ紙芝居を使って多くの人に伝えていきたい。
謝辞
この研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、洋野町、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校はじめ多くの方々からご指導とご協力をいただいた。記してここに謝意を表する。