日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P30] 八戸キャニオンを三陸ジオパークジオサイトに

*四戸 佐理名1、*阿部 未夢1、*中村 明香里1、*安原 至人1、*下村 謙介1 (1.マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニア)

キーワード:ジオパーク、三陸ジオパーク北部エリア、石灰岩、メガロドン、地域活動、科学クラブ

三陸ジオパークは、青森県から宮城県にかけての太平洋岸に設置されている。マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニアの属する八戸市水産科学館マリエントはその北端部にある。

 八戸石灰鉱山は青森県八戸市の南東部に位置している。(図1)露天掘りにより生じた巨大な採掘坑は、南北に約1800m、東西に約1000m、深さが約270mあり、底部は海面下170mに達する。明治時代から約100年で2億トンの石灰岩が採掘された。同鉱山の純度の高い石灰岩はセメント製造など工業都市八戸の礎となっている。また、巨大な採掘坑をグランドキャニオンに例えて「八戸キャニオン」と呼び、展望台が設置されて観光スポットとなっている。

 筆者らは、2018年度から郷土を学習する活動として三陸ジオパークについて学習してきた。巡検と観察、討論を元に協同学習を進め、知識の共有と情報発信の態度を育成するため「ジオ紙芝居」を作成し、実演してきた。その成果をJPGU2019とJPGU2020、第10回日本ジオパーク全国大会2019おおいた大会においてポスターと口頭で発表してきた。

 2020年度のジオパークに関係する活動は、青森県八戸市の島守盆地と青葉湖、是川遺跡の4カ所のジオサイト、八戸石灰鉱山を加えた巡検と予備学習、その振り返りと講義であった。そこで、前年度に引き続いて八戸キャニオンのジオサイトへの登録を提案することとし、新たにSDGsとの関わりについて検討してジオサイトとしての意義と魅力を発信することとした。

 ジオパーク活動はSDGsとの係わりが深く、日本各地のジオパークのSDGsの取り組みが発表されている。ユネスコ世界ジオパークも、2017年にジオパークが貢献できるSDGsの8個の目標について発表している。学校でも探究学習を中心としてSDGsに関する学習が進められている。しかし、教室での学習が多い、学校ごとの取り組みの違いが大きいなどの問題がある。身近なジオサイトの活用により、SDGsについて具体的に学習できると考えられる。また、2020年に発表された三陸ジオパーク公式ガイドブックにSDGsについての記載が少なく、八戸キャニオンとSDGsとの係わりを示すことは有意義な取り組みと考えた。

 筆者らは「メガロドンはどこから」、「長いベルトコンベアー」、「巨大な穴をどうするか」(図2)のテーマでジオ紙芝居を作成した。どのテーマも石灰鉱山のなりたちから、SDGsのターゲット12(つくる責任,使う責任)にかかわると考えられる。「メガロドンはどこから」は、石灰岩にふくまれる厚歯二枚貝化石の生育環境と化石化、日本までの移動について、また1億年かかって作られた石灰岩を100年で使うことを説明している。「長いベルトコンベアー」は、鉱山から八戸ふ頭まで総延長が10kmにも及ぶ地下輸送管が延びていて、石灰岩がベルトコンベアーで運ばれていること、輸送方法の変化とセメント工場について説明した。もっとも議論されたのは「巨大な穴をどうするか」についてであった。観光地やテーマパーク、ゴミ処理場などの案がでた。作成されたジオ紙芝居は、衣・食・住と仕事、エネルギーと廃棄物処理をまとめた、一つの町のような建設物の想定についてであった。住居・商店・公共機関のゾーンニング、ソーラー発電とゴミ焼却発電でカーボンニュートラルをめざす、災害備蓄庫と避難用住宅も準備するというものである。ターゲット12とターゲット11(住み続けられるまちづくりを)、ターゲット13(気候変動に具体的な対策を)など、複数の達成が可能であると予想される。八戸キャニオンを眺めながら巨大建築物を想像できるという意味でも、三陸ジオパークのジオサイトにふさわしい。

 ジオ紙芝居は分担して作成し、原画や説明は、以前に作成した物を参考にした。会員内で実演して何度も訂正を繰り返して作成したが、4月15日時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)への配慮により公開は会員のみにとどまっている。今後に向けて、ジオ紙芝居の公開やジオサイトの観察ルートの設定、ガイドブックの作成も計画している。

 この活動を通じて、私たちは今も動いている大地に暮らし、その恵みを受けていることが理解できた。八戸キャニオンを、SDGsの視点で見ることによって先人の知恵を学び、持続可能な開発を提案したい。また、この提案をジオ紙芝居を使って多くの人に伝えていきたい。



謝辞 
 この研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校はじめ多くの方々からご指導とご協力をいただいた。記してここに謝意を表する。