13:45 〜 15:15
[O07-P53] 造成地における地震被害のモデル化
キーワード:地震、アナログ実験、盛土
日本は世界有数の地震大国である。中でも、宮城県などの東北地方の太平洋沿いでは多くの地震が発生している。また、地震の被害は二次災害を含めさまざまであるが、我々はその中でも建物の倒壊にフォーカスして研究を行った。
まず前提として、建物の倒壊被害は宅地造成地に多い傾向がある。宅地造成地の地盤は、盛土と切土によってつくられる。盛土は、谷や山の斜面に外部から持ってきた土を被せた部分のことであり、切土は傾斜のある土地の地盤を削り取り、平らにした部分である。
現在日本には約3万ヶ所、総面積約626.9平方キロメートルの造成地がある。また、東日本大地震が発生した時、盛土上で全壊した家屋の数は盛土されていない土地の26倍であった。このことからも家屋が倒壊するリスクは造成地で大きいことが分かる。また、盛土と切土の境界では、多くの建物が倒壊していたこと、盛土の深さと震度は比例関係にあることが先行研究でわかっている。よって、それらの状況を簡略化したモデルをつくり、一般化したいと考えた。
目的とするモデルは、切土では揺れが一定で、盛土では盛土の深さと被害が比例したものである。
実験1では、切土の角度を20度にして、ピンを8mmまで刺した。揺らす速さは、100rpm,150rpm,200rpmの3種類である。評価方法は、実験開始時と終了時の写真を撮り、重ね合わせてずれた距離を測定した。
実験の結果、盛土部分における深さとピンのずれの相関係数が0.90474となり、強い相関が得られたが、盛土と切土の境界付近での被害があまり大きくなかった。
大規模宅地造成では切土と盛土の組成が同じことも多いようだが、我々は粘土と園芸用スポンジという異なる素材で、切土と盛土を再現しようとしてしまった。その他にも、正確な傾斜をつけるのが困難であったり、何より境界付近の被害が小さかったため、モデルの見直しが必要であると考えた。
今後の実験に用いるための盛土、切土用素材の条件としては、切土部分と盛土部分が同じ素材であることと実際の盛土、切土と硬さの比が一致していることが挙げられる。鶴ヶ谷における盛土のN値は2~21、切土のN値は40~50(N値の上限は50)であった。上記の条件を満たす素材として我々は園芸用吸水スポンジに注目した。(以降スポンジ)
この素材の妥当性を証明するため、予備実験を行った。その結果、手を加えていないスポンジと、砕いて体積を0.7倍に圧縮したスポンジの擬似N値の比が1対20となり、鶴ヶ谷における盛土と切土のN値の比の範囲と一致した。よってこの素材の妥当性が認められた。
それをもとに新たなモデルを作成し、実験1と同様の条件で実験2を行った。実験2では実験1とは違って盛土の深さとピンのずれに比例関係は見られなかったが、揺れの長さに関わらず境界付近の盛土部分におけるピンのずれが最大になるという結果が得られた(画像のグラフを参照)。
この結果が適当なものなのか判断すべく、2011年の南光台における地震の被害のデータと比較を行った。2011年の南光台では、盛土と切土の境界部分や盛土が深い部分と比べて、境界付近の盛土における住宅半壊、全壊の被害件数が著しく多くなっていた。このことは我々の実験結果を裏付けるものであるため、境界付近においては再現性のあるモデルであるといえる。また、盛土は浅いからと言って、安全とは言えずむしろ危険な可能性が高い。
これらの結果を踏まえると、1つ目のモデルでは盛土の深さと被害の大きさの比例関係を、2つ目のモデルでは境界付近の被害の顕著さを再現できたことになる。また、2つ目のサイズをより大きくし、盛土のさらに深い部分まで表現・測定できれば、1つのモデルのなかに両方の条件を揃えられるのではないかと考えられる。少なくとも、我々の作成したモデルを、注目する場所に応じて使い分けることで、造成地における地震被害を定量的に評価することができるだろう。
まず前提として、建物の倒壊被害は宅地造成地に多い傾向がある。宅地造成地の地盤は、盛土と切土によってつくられる。盛土は、谷や山の斜面に外部から持ってきた土を被せた部分のことであり、切土は傾斜のある土地の地盤を削り取り、平らにした部分である。
現在日本には約3万ヶ所、総面積約626.9平方キロメートルの造成地がある。また、東日本大地震が発生した時、盛土上で全壊した家屋の数は盛土されていない土地の26倍であった。このことからも家屋が倒壊するリスクは造成地で大きいことが分かる。また、盛土と切土の境界では、多くの建物が倒壊していたこと、盛土の深さと震度は比例関係にあることが先行研究でわかっている。よって、それらの状況を簡略化したモデルをつくり、一般化したいと考えた。
目的とするモデルは、切土では揺れが一定で、盛土では盛土の深さと被害が比例したものである。
実験1では、切土の角度を20度にして、ピンを8mmまで刺した。揺らす速さは、100rpm,150rpm,200rpmの3種類である。評価方法は、実験開始時と終了時の写真を撮り、重ね合わせてずれた距離を測定した。
実験の結果、盛土部分における深さとピンのずれの相関係数が0.90474となり、強い相関が得られたが、盛土と切土の境界付近での被害があまり大きくなかった。
大規模宅地造成では切土と盛土の組成が同じことも多いようだが、我々は粘土と園芸用スポンジという異なる素材で、切土と盛土を再現しようとしてしまった。その他にも、正確な傾斜をつけるのが困難であったり、何より境界付近の被害が小さかったため、モデルの見直しが必要であると考えた。
今後の実験に用いるための盛土、切土用素材の条件としては、切土部分と盛土部分が同じ素材であることと実際の盛土、切土と硬さの比が一致していることが挙げられる。鶴ヶ谷における盛土のN値は2~21、切土のN値は40~50(N値の上限は50)であった。上記の条件を満たす素材として我々は園芸用吸水スポンジに注目した。(以降スポンジ)
この素材の妥当性を証明するため、予備実験を行った。その結果、手を加えていないスポンジと、砕いて体積を0.7倍に圧縮したスポンジの擬似N値の比が1対20となり、鶴ヶ谷における盛土と切土のN値の比の範囲と一致した。よってこの素材の妥当性が認められた。
それをもとに新たなモデルを作成し、実験1と同様の条件で実験2を行った。実験2では実験1とは違って盛土の深さとピンのずれに比例関係は見られなかったが、揺れの長さに関わらず境界付近の盛土部分におけるピンのずれが最大になるという結果が得られた(画像のグラフを参照)。
この結果が適当なものなのか判断すべく、2011年の南光台における地震の被害のデータと比較を行った。2011年の南光台では、盛土と切土の境界部分や盛土が深い部分と比べて、境界付近の盛土における住宅半壊、全壊の被害件数が著しく多くなっていた。このことは我々の実験結果を裏付けるものであるため、境界付近においては再現性のあるモデルであるといえる。また、盛土は浅いからと言って、安全とは言えずむしろ危険な可能性が高い。
これらの結果を踏まえると、1つ目のモデルでは盛土の深さと被害の大きさの比例関係を、2つ目のモデルでは境界付近の被害の顕著さを再現できたことになる。また、2つ目のサイズをより大きくし、盛土のさらに深い部分まで表現・測定できれば、1つのモデルのなかに両方の条件を揃えられるのではないかと考えられる。少なくとも、我々の作成したモデルを、注目する場所に応じて使い分けることで、造成地における地震被害を定量的に評価することができるだろう。