日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P70] 簡易風力発電機の形状と発電量の関係

*福井 大空1 (1.東京都立立川高等学校)

キーワード:風力発電機、ハブダイナモ、安定供給

1.研究背景・動機
地球温暖化の対策の一つとして挙げられる風力発電の導入が、世界で進んでいる。本研究では、風力発電機の形状と発電量の関係に興味を持ち、簡易型の発電機で実験を試みた。まず市販のキットによる簡易風力発電機を組み立てて実験を行い、次に廃材を用いた簡易風力発電機を自作して、発電機の形状と発電量の関係を考察した。

2,ループウィング型風力発電機を用いた実験
まず、一つ目の実験ではループウィング型風力発電機を使用した。簡易風速計と扇風機を用いて一定風速毎に、それぞれ5分間発電した。そして、その蓄電した電気で走行するモーター駆動車の走行時間を記録した。それぞれの風速で6回ずつ計測し、その平均値を計算してまとめた。その結果は、発電量が風速のおよそ二乗に比例することになった。しかし計算式を立てると、発電量は風速の三乗に比例することになる。つまり、理想値よりも小さな値が実測値として得られたということで、その原因としては、室内での実験だったため、気流などの条件をうまく整えられなかったことが考えられる。したがって、風速の増加に伴ってより効率的な力の利用方法を考えなければ無駄も大きくなってしまうと分かった。


3.多翼型風力発電機とサボニウス型風力発電機の比較実験
2つめの実験ではキットを用いた多翼型の風力発電機と、廃材から自作したサボニウス型風力発電機を使用した。多翼型風力発電機は、水平軸ということもあり、ブレード部分と本体の結合が難しかった。また、サボニウス型風力発電機は、参考文献*1をもとに、本校の廃棄自転車や不使用バケツを分解・再利用して作成した。実験では、大型扇風機と簡易風速計を用い、最大発電量・最小発電量と、そのときのそれぞれの風速を計測した。多翼型風力発電機は弱風でも回転しはじめるが、サボニウス型は重量が約3倍もあったため、風が強くならないと回らず、風が弱まるとすぐ止まってしまうという傾向が見られた。回り始めの風速は多翼型が風速3.5m/sで、サボニウス型が風速5.0m/sであった。ハブダイナモが示す最大発電量はどちらの風力発電機でも500 mAであり、扇風機の最大風速6.0m/sでの最大発電量は、多翼型が500mA、サボニウス型で450mAであった。二つの発電機の風受け面積が大きく異なっているため、発電機毎に単位風受け面積当たりの最大発電量を算出したところ、多翼型は1.61×10^-3mA/mm^2、サボニウス型は2.90×10^-3mA/mm^2で、約2倍の違いがあった。ここから、扇風機のような一定の風向・風速の元ではサボニウス型の方が多翼型よりも発電量が多いと考えられる。

4.本校屋上での実測実験
最後の実験では、弱風でも回りやすい多翼型風力発電機を本校屋上に持ち出し、発電量と計測時の風速を8回計測した。発電量は電流計で計測し、風速は手元の簡易風速計の他、本校の自動気象観測装置に設置されている風速計の値を利用した。それらの値をまとめると、風速・発電量ともに日によって大きな差が出た。また、手元で計測した風速と本校の気象観測装置で計測した風速にも差が生じたことからも、やはり電力の安定供給は難しいことがわかる。

5 .まとめ
三種類の風力発電機を組み立て・自作し、計三種類の実験を実施した。サボニウス型は多翼型よりも単位風受け面積当たりの発電量が多く、多翼型はサボニウス型よりも弱風でも回り始めるという特性もあった。屋外の実験では、室内と異なり、風力と風速が変化し続け、発電量が安定せず、計測することが難しかった。屋外で電力を安定して供給するには、課題が多いことを実感した。

6.謝辞
今回の実験及び、考察にご協力していただいた本校教師可長清美先生、本校TAの浪波翔太先輩、樋口陽光先輩ありがとうございました。ほかにもたくさんの方々にご協力いただきました。本当にありがとうございました。

7.参考文献
*1川村康文『大人の週末工作 自分で作るハブダイナモ風力発電機+』