日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P72] 白田川が青白く見えるのはなぜか

*須貝 周平1、*吉田 亮祐1 (1.静岡県立下田高等学校)

キーワード:白田川、伊豆半島、硫黄、コロイド、水

【研究の動機】東側を駿河湾に、西側を相模湾に面した伊豆半島は、静岡県の東端にある。フィリピン海プレートに乗って南方から移動してきた陸地が、100万年前に本州とぶつかってできた伊豆半島には、全世界でも類例の少ない貴重な地形が数多く知られ、このような地形の中には、観光地になっているものがあれば、学術的に保護されているものもある。白田川は東伊豆町を流れる河川であり、その上流では硫黄の採掘が行われていた。江戸時代に起源を持つ白田川の硫黄採掘は、下流住民の生活用水に悪影響を与え、陳情の記録が残っているものとしては日本国内初とされる公害問題を引き起こした。しかしながら、明治20年以降は採掘を行っておらず、近現代以降これらの伝承を検証した知見は少ない。私たちは、白田川に水面が青白色に見える地点のあることに興味を持って研究を始め、やがて硫黄の産出を検証し、合わせて周辺の水質調査を行うことにした。

【研究の方法】白田川の青白く見える地点では、硫黄コロイドによる光の散乱が起きていると、私たちは予想した。そこで、本当に硫黄が産出しているか疑問を持ったので、硫黄の採掘跡から流れ出る白色の粉末を含んだ泥と水を持ち帰り、下田高校化学室で分析した。また、試薬の硫黄を使って、青白く見える水の再現を試みた。現地での水質調査は、ポータブルpHメーターを使って白田川各地で行った。

【研究の成果】車両通行止めのある水源かん養保安林入口から徒歩2時間の場所に硫黄採掘跡を見つけた。付近の水質調査を行ったところ、硫黄採掘跡近くの水はpH=3.4の酸性であり、白田川本流の水は、白田浄水場までにpH=7.4となって、その間で中性になることが分かった。支流には、pHが6以下の酸性の水が流れるものと、pHが6以上8以下のほぼ中性の水が流れるものの両方があった。硫黄採掘跡から流れ出る白色の粉末を含んだ泥には、硫黄が含まれていた。このことは、採取場所の近くで硫化水素や二酸化硫黄といった硫黄化合物に特有の匂いがしたこと、有機溶媒の二硫化炭素で抽出すると採取した泥から黄色の固体が得られたこと、塩基性加熱下で鉛(Ⅱ)イオンを作用させると硫化鉛(Ⅱ)ができた場合と同じ黒色沈殿が生成したことによって確かめることができた。また、泥に含まれている硫黄は、質量比で約3割であった。この数値は、加熱で二酸化硫黄にするか、有機溶媒の二硫化炭素で抽出するかして、試料に含まれる硫黄を除去する2通りの実験で求めた。さらに、金属塩の沈殿を観察することで、硫黄採掘跡から流れ出る水には硫酸イオンや硫化物イオンが含まれることを明らかにできた。以上から白田川の水に硫黄が流れ出していることは確実と考え、試薬の硫黄を使って硫黄コロイドのコロイド溶液を作成し、光の散乱による色彩変化を観察したところ、光を当てた下部が青白く見えることを観察できた。

【考察】硫黄は原子番号16の非金属元素であり、その単体は天然に産出する。現在、硫黄は石油や石炭の脱硫装置から得られており、将来、白田川上流が硫黄採掘所として開発される可能性は少ない。現在の白田川は水質も安定しており、白田浄水場の水が東伊豆町の大半の上水道を支えている。私たちの研究で、白田川の青白く見える水が再現できたので、もっと安心して白田川と共存していく方策を考えていきたい。

【展望】自分たちの実験で、水が青白く見えるのは硫黄コロイドのためだと明らかにできた。上流には魚がいないという噂もあったが、濁りを沈殿させるための堰堤が多く設置されている、という要因もあるようだった。いろいろな観点で、調べていきたい。また、水面の最も青白く見えた地点で、3カ月に1回程度の頻度でpHを継続して調べている。白田川上流の次の探検では、硫酸イオンや硫化物イオンのパックテストを使った調査や、硫黄坑第一号坑よりも上流には何があるのかといった調査をしたいと考えている。